人と環境に優しいウェアが完成! 「TOKYOエシカル ファッションチャレンジ 成果発表会」をレポート

中高生がプロのデザイナーと一緒にウェアの制作をしながら、商品ができていく過程が人や環境に優しいものになっているかを学び、考え、発信する「TOKYOエシカル ファッションチャレンジ」。

以前、前編・後編でレポートしたワークショップも全8回中7回まで終了し、その集大成として、「TOKYOエシカル ファッションチャレンジ 成果発表会」が2024年11月15日(金)に新宿パークタワーホールにて開催されました。
今回はワークショップに参加した学生たちが完成したウェアを披露し、学んだことを発表する様子をレポートします。

TOKYOエシカルアドバイザー・エシカルディレクター 坂口真生さん

まずはTOKYOエシカルのアドバイザーであり、TOKYOエシカルファッションチャレンジでは講師を務めた坂口真生さんから、「ファッション業界は市場が大きく、さまざまな人の手を介して作られているため、環境被害や労働環境の悪さなどの問題があること。それらを早い段階から若者に知ってもらいたい」と、ワークショップの開催にあたっての想いが語られました。

 

いつでもどこでも着られる、さまざまな立場の人に配慮したウェア

坂口さんのお話のあとは、学生たちが3つのグループに分かれて発表します。
グループ1のタイトルは「Everywear~新たな二刀流~」。講義で学んだ「ダイバーシティ」というキーワードをヒントに、さまざまな立場の人に配慮したウェアを考案しました。
フォーマルとカジュアルの二刀流をコンセプトに、いつでもどこでも、男女問わず着られるウェアを提案します。

グループ1が制作したウェア

ポロシャツとブラウスの2種類があり、どちらもデザインを変えて楽しめるダブルポケット仕様がポイント。ブラウスの袖は長さを調節可能にするなど、長く使えるよう着回しが効くデザインにしました。

シーンによって取り外しできるポケット

ポケットやタグに使用したデザインは、エシカルという言葉から連想した優しいイメージを表す丸みのある形や、ダイバーシティから連想したカラフルな配色にしています。

素材は製造段階で水の使用量を通常のポリエステルと比べて85%削減した、三栄コーポレーションの「e.dye」を使用。裾のリバーシブルタグには二次元コードが印刷されていて、読み込むと節水やCO2排出削減への貢献度が分かる仕組みです。
「おしゃれさや使い勝手も意識して作った作品なので、おしゃれを楽しみながら、自然と周りにエシカルが広がってほしい」と語りました。

 

エシカルな意識が自然と根付くワンマイルウェア

グループ2のコンセプトは「ワンマイルウェア 着心地がよくてボーダレス」。
アパレル業界が大量に水を使用している現状を知ってもらうべく、環境に優しい素材を使ってワンマイルウェアを制作しました。家の中で長い時間着用する部屋着がエシカルなものであれば、服への意識が変わるのではないかという意図が込められています。

グループ2が制作したウェア

スウェットタイプとフード付きパーカーの2種類があり、どちらもオーバーサイズでゆったりと着られるのがポイント。年齢や性別問わず着られるカラーや、冷気を防ぐリブ袖など機能性も意識しています。デザインはエシカルという言葉から暖色系の色味をイメージし、 温かさや優しさが伝わるような色と形にしました。

学生のアイデアでデザイン部分は刺繍加工に

素材には衣料品の製造工程で出るコットンの端切れをリサイクルした、三栄コーポレーションの「Pure Waste」を使用。綿を新たに栽培する際に必要となる水の使用を大幅に削減できます。
「おしゃれだから欲しいと思ってもらえたり、この服がエシカルを知るきっかけになったりすると嬉しい」と話しました。

 

イベントやフェスで繰り返し使えるスタッフジャンパー

グループ3のタイトルは「シン・ロングライフウェア」。
野外イベントのスタッフや参加者が、イベントごとに専用のジャンパーを着ていることに着目し、雨具としても機能して長く使用できる汎用性のあるアウターを提案しました。

グループ3が制作したウェア

撥水・メッシュ加工により天候の変化に耐えられ、アウターとして使いやすい機能性を実現。デザインは白をベースに、差し色として肩部分にグレーを配色しています。ポケットの位置は移動でき、利き手に合わせて使いやすくアレンジ可能です。

さまざまな場所にポケット・腕章が付けられる

袖の上部にはクリアポケットがあり、腕章を入れ替えればさまざまなイベントで使用可能です。ビジュアルイメージは、エシカルという言葉から固定観念に捉われない、 規則性のないデザインにしました。

素材にはグループ1と同じく「e.dye」を使用し、水の使用量を大幅に削減。「e.dye」は粉末の段階で染色するため、環境に優しいだけでなく色落ちや変色しにくいのも強みです。
「エシカルなウェアであると同時に、デザインや機能面にも注目してもらえたら嬉しい」と語りました。

 

ワークショップでの学びを生かしてより良い未来へ

3グループの発表が終わった後は、参加学生全員と、デザイン部分の講師を務めた一法師拓門さん、衣装製作・技術協力・デザインを務めた株式会社三栄コーポレーション 山田敦さんもステージに集まり、トークセッションを行いました。

学生たちからは「最初はエシカルという言葉の意味が分からなかったけれど、ワークショップを通して身近に感じられ、深く学べた」「消費者としてではなく、企業側からエシカルを考えることができ、新しい視点が得られた」「エシカル消費は”優しい選択”と教えてもらったが、今後も人や環境に優しい選択をしていきたいし、身近な人に広めていきたい」といった感想が寄せられました。

 

成果発表会の最後には小池百合子東京都知事によるビデオメッセージもあり、学生へ向けてワークショップでの学びを今後に生かしてほしいこと、周りの人にも広めてほしいことが伝えられました。

全8回のワークショップを通してエシカルファッションとは何かを学び、考え、発信をしてきた学生たち。
この先もずっとファッションを楽しむために、自分たちにできることは何なのか、気付きを得るきっかけとなりました。

衣装製作・技術協力:株式会社三栄コーポレーション
株式会社三栄コーポレーションの取組についてはこちらから
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Pure Wasteの詳細についてはこちらから

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※TOKYOエシカルファッションチャレンジ成果発表会は01:06:37~

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