【ローカルラボ】高校生が地域の課題に取り組む。「LOCAL FISH CAN グランプリ」が生み出す新たな価値
日本各地には、地域で獲れていても、さまざまな理由から十分に活用されていない魚があります。近年では、こうした水産資源を生かしながら、漁業や海洋環境が抱える課題の解決につなげる取組も進んでいます。
一般社団法人ローカルラボが主催する「LOCAL FISH CAN グランプリ」は、全国の高校生がこうした地域の水産資源に目を向け、漁師や加工業者など地域の人々と関わりながら、オリジナル商品を企画・開発するコンテストです。
今回は、ローカルラボ代表理事の志村英治さんに、「LOCAL FISH CAN グランプリ」を通じて目指す地域づくりや、日々の食の選択につながるヒントについて伺いました。
高校生の視点で「課題魚」の可能性を見つける
海洋環境や漁業を取り巻く状況が変化するなか、各地には、十分に活用されていない魚や、海洋環境の変化によって新たに獲れるようになった魚、磯焼け・食害など地域の海の課題と結びつく生き物があります。「LOCAL FISH CAN グランプリ」では、こうした水産資源を「課題魚」と呼んでいます。
ローカルラボはこうした課題魚も、見方を変えれば地域の新たな資源になるのではないかと考えました。その可能性を次世代を担う高校生の発想に託してみようと始めたのが「LOCAL FISH CAN グランプリ」です。
高校生たちは各地の課題魚をテーマに、缶詰やレトルト食品などの新商品を企画・開発します。審査では、味やアイデア、プレゼンテーションに加え、地域の人たちと関わりながら、どのように商品を形にしていったのか、そのプロセスも評価されます。
志村さんはこのコンテストを「高校生たちが地域を見るための入り口」と話します。
「高校生は地域の専門家ではないからこそ、『なぜ?』『どうして?』という素朴な疑問を持つことができます。そこから、大人にはない発想が生まれることもあります。自分たちのアイデアで地域を少しでも変えられる、という実感を持ってほしいのです」
地域と高校生がつながり、課題を価値へと変えていく
高校生たちはテーマを考える段階から商品を形にするまで、漁師や加工業者など地域の人々に直接話を聞き、その魚を取り巻く環境や地域の食文化などを学びながら、アイデアを深めていきます。地域の人々との関わりを通じて、地域の課題を知り、新たな価値を見つけていくことも、この取組の特徴です。
その一例が、2025年の最優秀賞に選ばれた北海道小樽水産高等学校の「小樽でとれたシイラを使った魚醤 おいしいら」です。
温暖化などの影響で全国的に水揚げが増えているシイラは、近年では小樽でも獲れるようになりました。しかし、小樽にはシイラを食べる文化がほとんどなく、「獲れるようになったのに、十分に活用されていない」という課題がありました。
高校生たちはまず、シイラをどうすればおいしく食べられるかを考え、地域の歴史や食文化、海洋環境の変化などにも目を向けていきました。さらに、漁師や加工業者、飲食店など、地域のさまざまな人に話を聞きながらアイデアを深めていく中で、小樽で昔から培われてきた魚醤の技術に着目し、シイラを魚醤として生かす発想が生まれました。
こうして、地域にある資源や技術を新たな視点で捉えることで、これまで十分に活用されていなかったシイラに新たな価値を見出しました。
商品を形にするまでの経験は、高校生たち自身にも大きな刺激になっています。志村さんによると、参加した高校生からは「漁師になって、おいしい商品を作って全国展開したい」「日本の魚介製品を海外で販売したい」といった声も聞かれるそうです。
「誰が、どんな思いで作ったか?」身近な選択に目を向ける
志村さんが「LOCAL FISH CAN グランプリ」を通じて目指しているのは、新しい商品を生み出すことだけではありません。
「一番大切なのは、この取組を通じて、地域の課題を自分たちの手で新しい価値に変えていける人を増やしていくことだと思っています。地域の人、高校生、企業、行政など、さまざまな人が一緒になって地域の未来を考えられる場を、これからもつくっていきたいですね」
地域の水産資源に目を向けることは、東京で暮らす私たちにとっても遠い話ではありません。東京にも、伊豆諸島や小笠原諸島周辺、東京湾などの海があり、魚介そのものだけではなく、佃煮や干物など多数の名産品があります。東京にとっても魚介や漁業、水産品は身近なテーマです。
志村さんは、「特別なことをする必要はなくて、『誰が、どこで、どんな思いで作ったものなのか』を少し意識して商品を選ぶことも、エシカル消費の一歩になると思います」と語ります。
普段手に取る魚や食品が、どこから来て、どのような人たちによって届けられているのか。身近な食に少し目を向けることが、地域の資源やその未来について考えるきっかけになるかもしれません。
LOCAL FISH CAN グランプリ
https://localfishcan.com/
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