Ethical Entertainment& Stories:ものがあふれる今、暮らしを見つめ直す一冊『使いきる。有元葉子の整理術 衣・食・住・からだ・頭』

エシカルは「学ぶ」より、まず「感じる」もの。この連載では、映画や書籍などの物語を通して、日々の選択にやさしく目を向けます。第3回は、自らも大切にしたいものを見極めながら、シンプルな暮らしを実践するライター・今泉愛子さんが、『使いきる。有元葉子の整理術』から、日々の暮らしを見つめ直すヒントを紹介します。

暮らしを見つめ直したい今、読みたい一冊

ものがあふれる暮らしのなかで、不要なものを手放し、暮らしを整える「捨て活」という言葉を耳にする機会が増えました。身の回りのものを整理して暮らしをシンプルにする取り組みで、私も時折、家を見回しては不要なものを減らすようにしています。

けれど、本書で語られる「使いきる」は、ただものを減らしたり、手放したりすることとは少し違います。必要なものを見極め、選んだものを大切にしながら、最後まで使いきること。そんなものとの向き合い方に、エシカルな暮らしのヒントがあります。

有元葉子さんと『使いきる。有元葉子の整理術』

著者の有元葉子さんは、料理研究家として長年活躍し、その暮らしや生き方も多くの人々の関心を集めてきました。すっきりと片付いたキッチン、長く使い続けている調理道具、流行に左右されないワードローブ。シンプルで無駄のない彼女の暮らしには、エシカルな考えにも通じるものがあります。3人の娘を育てながら働いてきた経験や、世界各地を旅して得た視点などがもとになっています。

そうした有元さんの暮らし方や考え方をまとめたのが『使いきる。有元葉子の整理術 衣・食・住・からだ・頭』です。片づけ方や家事の流れ、掃除やメンテナンスなど、日々の暮らしで実践している工夫やものとの向き合い方が紹介されています。

ものを使いきる、日々の小さな実践

著者は冒頭で、快適な暮らしとは循環している状態だと語ります。ものをためない。汚れもためたくないからすぐに掃除する。そしてお腹にも心にも余計なものをためない。そうすることで快適な暮らしが維持できるというのです。

そのために実践しているのが、いるものといらないものを見極め、いるものをとことん使いきること。たとえば鍋つかみは、焦がして穴があくと、いらなくなった布のマットで補修して使い続けます。Tシャツは、クタクタになるまで着てから買い替える。だからクローゼットは常に一定量を保っています。ポイントは、捨てても惜しくないくらい使いきること。そうすることで、ものが滞らず、暮らしに循環が生まれます。

私も買いすぎないようにと心がけていても、ふと気づくとものがたまっています。この本を読んで、その理由に気づきましたものを手に入れたり、手放したりすることに目を向ける一方で、今あるものを「使いきる」という視点が抜けていたのかもしれません。

暮らしの「流れ」を大切にする有元さんは、大根も皮や葉まで含めてひとつのものとして捉えます。皮は干して炒め物にするなど、一見捨ててしまいそうな部分も、おいしく食べる方法を考えます。さらに、皮まで食べきるなら良い大根を選びたい。素材を無駄なくおいしく食べようとすれば、調味料や出汁にも目が向く。こうして一つひとつの選択がつながり、暮らしに自然な流れが生まれていくのです。

「使いきる」ことから始める、エシカルな暮らし

この本が教えてくれるのは、ものを減らすことだけではなく、今あるものを最後まで大切に使いきるという心地よい循環です。ものを使いきることは、そのものを十分に生かすことでもあります。そうした暮らし方は、社会や環境への負荷を減らすことにもつながります。

有元さんが提案する快適な暮らしには、エシカルな消費につながるヒントがたくさんあります。新しいものを手に入れる前に、本当に必要かを考える。今あるものは、手入れや工夫をしながら長く使う。食材も、捨てる前に使いきる方法を考えてみる。

まずは今あるものを一つ、大切に使いきることから。日々の暮らしの中で実践してみたくなるアイデアが詰まった一冊です。 

 
『使いきる。 有元葉子の整理術 衣・食・住・からだ・頭』  
有元葉子著 
講談社刊 
ISBN978-4-06-218146-4  
 
 

執筆者/今泉愛子(ライター) 
雑誌「Pen」の書評を2002年から20年間担当。東京と茨城県土浦市で2拠点居住中。松浦弥太郎著『松浦弥太郎の「いつも」 安心をつくる55の習慣』等多くの書籍構成も手がける。世界マスターズ選手権大会5000m3位(2022年)、ランナーとしても活動。  

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