Ethical Cities: 「買う人」から「支える人」へ。 ブルックリンの参加型スーパーが育むコミュニティ
世界の都市に暮らす人びとの日常やライフスタイルに息づく“心地よい選択”を、現地に住む執筆者がレポートする「Ethical Cities」。今回はニューヨーク・ブルックリン在住の安部かすみさんが、50年以上続く参加型スーパー、Park Slope Food Coopを通して、地域や生産者とのつながりを育む消費のあり方を紹介します。商品を選ぶだけでなく、地域や生産者に目を向けることも、エシカル消費について考えるヒントになります。
「働くことが条件?」ニューヨークで驚いた買い物文化
24年前、ニューヨークに移住してまもなく人づてに存在を知った協同組合型スーパー、Park Slope Food Coop。その後ブルックリンに引っ越し、偶然にも家の近所にこの店があることを知りました。
ここで買い物ができるのはコープ会員のみ。入会金25ドルに加え、出資金100ドル(解約時に返金)が必要です。そして会員はここで働かなければなりません。なぜ、そんな仕組みが成り立つのだろうと驚いたのを覚えています。
ある日曜の午後出かけると、店内はかなり活気がありました。実際に働いている人に声をかけてみると、どの人もフレンドリーに応じてくれました。会員歴14年の30代女性は、普段はフリーランスとして働き、この店でのカート整理係を楽しんでいるそうです。理由は「人とおしゃべりできるから。冬場は辛いけど(笑)」。ほかにレジ係など、仕事は希望で選べるそうです。また、30代の男性は「いまは輸送の関係で果物は他店と値段が変わらないけど、肉は本当に質が良いよ」と、親切に教えてくれました。
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50年以上愛される「参加するスーパー」とは?
Park Slope Food Coopが創設されたのは1973年のこと。会員は労働を提供し、重要な方針や運営に関する意思決定にも投票を通じて参加します。消費者が運営に関わる協同組合はニューヨーク市内にもありますが、コープ会員となった買い物客全員に労働参加を義務付けるモデルは世界的に珍しく、独自の生協モデルとして注目されています。
オーガニック食品を含む野菜や果物、新鮮な肉や魚など高品質な商品は、生産者や栽培方法を店頭表示などで確認しながら購入できます。価格も、一般のスーパーより2割から4割程度低価格で販売されているものが少なくありません。このような価格を実現できる背景には、農家や生産者組合との直接取引を含む多様な仕入れに加え、利用客である会員自身が店舗で働くことで人件費を抑える仕組みがあります。会員は6週間に一度、2時間45分の労働が求められます。事前に予約して多めに働くことも可能で、その分はシフトクレジットとして貯めることができ、忙しくて働けない6週間があった場合にはそのシフトクレジットを使うこともできます。逆に、シフトをこなさなければ、買い物をすることはできません。
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なぜブルックリンでは、消費者参加型の仕組みが根付いたのか
Park Slope Food Coopのような「参加型」の仕組みが長きにわたり支持される背景には、物価高のニューヨーク生活において価格面での魅力はもちろん、会員に「自分たちで運営する、自分たちの店」という共同オーナー的な自覚が芽生えることにありそうです。
ほかにも、コミュニティ活動が盛んなこのブルックリンならではの文化的背景も関係しています。例えば、この店の近所にプロスペクトパークという広大な緑地・森林公園がありますが、ここは市の管理のもと地域住民が、寄付やボランティアを通して守り育てています。
同じような光景は市内各地のコミュニティガーデンでも見られます。住民は花や野菜の手入れをしながら共に育てます。収穫だけが目的ではなく、地域の人々のつながりを育む場にもなっています。
近郊農家の野菜や果物を販売するファーマーズマーケットも同様です。買い物客は生産者から直接、新鮮で安心できる食材を手に入れられるのと同時に、生産者を支えることもできます。生産者も地域住民とのつながりを築きながら質の高い食を提供できます。
このようにコミュニティで支え合う関係が日常の暮らしに息づく土壌がブルックリンにはあります。参加型スーパー、Park Slope Food Coopもそのような文化の延長線上にあるのです。
ブルックリンのファーマーズマーケット
東京でもできる「参加する消費」
このように消費者が店づくりに関わり、コミュニティを支え合うモデルは、日本ではまだ珍しいかもしれません。しかし「参加し支え合う消費」は東京でも可能です。
例えば地元の商店街や小売店で買い物をしたり、生産者の顔が見える地域の直売所に足を運んで生産者と対話したりするなど、単なる商品の売買だけでなく「誰にどこでどのように作られたか」に関心を持つことで、地域とのつながりが生まれます。
便利さやコストパフォーマンスだけでなく人との交流や地域への愛着も含めて買い物を楽しむ。それが東京でもできるエシカル消費、さらには「未来につながる食の循環」の第一歩になるかもしれません。
執筆/安部かすみ(ジャーナリスト)
ニューヨーク・ブルックリン在住。ライフスタイル、カルチャー、イベントなどをテーマに、日本のWebメディア、雑誌、テレビ、ラジオなどで発信。現地で長く暮らす視点を生かし、都市と人々のリアルな暮らしや文化を伝える。著書に『NYのクリエイティブ地区ブルックリンへ(旅のヒントBOOK)』(イカロス出版)がある。
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エシカル消費に関する専門用語を解説しています。
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