Ethical Cities:誰かのいらないものが、誰かの宝物に パリの週末に開かれるヴィッド・グルニエ
世界の都市の人びとの日常やライフスタイルに息づく“心地よい選択”を、現地に住む執筆者がレポートする「Ethical Cities」企画。第1回は、“ヴィッド・グルニエ”というフランスのエシカルな習慣をパリ在住のエディター鈴木桃子さんが紹介します。
“あるもの”から見つける、パリのおしゃれ術
写真:パリ市内のヴィッド・グルニエ(以下同)
私が東京からパリへ移住して、まず驚いたことはヴィンテージやセカンドハンドショップ※の多さです。街を歩けば古着店があちこちにあり、おしゃれを楽しむ若者たちにとっても、それが買い物の最初の選択肢になっています。東京では新品を購入することが前提となっていましたが、パリではまず、すでにあるものの中から選ぶという感覚が自然に根付いているように感じます。
※新品ではなく、以前に使用されたがまだ使用可能な商品を販売する店舗
たとえば、フランス人は不要になったものはゴミとして捨てるのではなく、近所のリサイクルセンターに持ち込みます。フランス人の友人いわく、「自分にとって古いものは、誰かにとって新しいもの。誰かにとって古いものは、自分にとって新しいもの」。そして、持ち込んだリサイクルセンターで、その人にとっての何か目新しいものを見つけてまた持ち帰っていくのです。決してミニマリズム主義というわけではなく、ものが溢れる暮らしを楽しむフランス人らしさを感じます。
フランス人の週末の楽しみ、ヴィッド・グルニエとは?
そんなフランス人の古いものを大事にする価値観が色濃く表れているのが、フランスのフリーマーケット、ヴィッド・グルニエです。フランス語で“屋根裏を空にする”という意味で、週末になると公園や通りなど、パリの街角のあちこちで開催されます。イベント情報は、専用サイトでチェックすることもできます。プロの業者中心の市場とは異なり、地域の人たちが主体となって、誰でも気軽に出店できるのが特徴です。
私がよく訪れるのは、パリ3区から4区に広がるマレ界隈のヴィッド・グルニエ。会場では、家族や友人同士がスタンドを構え、思い思いに品物を並べていました。販売されていたのは、家具や調理器具、電子機器、服、書籍、玩具など、家庭で使われなくなったもの。一見雑然としているようで、数百年前に描かれた絵や有名な窯で焼かれた皿など、中には貴重なアンティークが紛れていることもあります。自分が長く探していたものに偶然出会うことができたり、ふと目に留まった格式ばらないブロカント(中古の日用品や雑貨)が新しいお気に入りになったり、ヴィッド・グルニエを巡る時間そのものが、週末の楽しみとしてフランス人の暮らしに溶け込んでいます。
長く愛用して受け継いでいくことが大切
時間を経たものに価値を見出す、ブロカント文化が根付いているフランス。家具や雑貨、服に至るまで、使い込まれた風合いも魅力のひとつとして受け止められています。だからこそ、新しいものを購入する際にも、長く愛用できるかどうかを軸に選ぶことが大切にされています。そうして丁寧に使ってきたものだからこそ、手放す時にも、次の誰かに受け継いでほしいという気持ちが自然に生まれていくのです。
こうしたフランスの古いものを大切にする価値観は、日本の「もったいない」という感覚にも通じるものがあると感じます。長く使えるものを選び、大切に愛用して、次の人へとつないでいくこと。その積み重ねは決して特別なことではなく、日常の中で無理なく続けられる身近な行動なのだと思います。
東京でも近年、フリーマーケットやリユースショップが増えています。地元の人だけでなく、日本の文化に触れられると海外からの来訪者にも人気で、さまざまな人が行き交うにぎやかな場となっています。誰かが手放そうとしているものの中に、自分だけの宝物が見つかるかもしれません。また、ものとの出合いだけでなく、出品者や訪れた人との何気ない会話も楽しみ方のひとつ。週末にふらりと足を運び、そんな偶然の出会いを楽しんでみてはいかがでしょうか。
執筆/鈴木桃子(エディター)
出版社に勤務を経て渡米し、帰国後より『madame FIGARO japon』編集部に所属。2022年よりパリに移住した後、フリーランスエディターとして活動。パリの文化やライフスタイルに精通、ファッションやアート領域にも造詣が深い。
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