「もう一度、誰かのもとへ」——古着を活かすエシカルな選択

もう着なくなった服が手元にあるとき、どのような方法で手放していますか。
ただ処分するのではなく、誰かに譲ったり、他の使い道を考えることも、エシカルアクションの一つにつながります。
そこで今回は、環境にやさしく、地球の未来を支えることもできる「古着を活かす」方法をご紹介します。

衣類がもたらす、見えにくい環境負荷

私たちが普段着ている衣服は、その1着が生まれてから役目を終えるまでの過程をたどると、想像以上に大きな環境負荷を伴っています。
ここでは、「製造・輸送・廃棄」の3つの観点から、衣類がもたらす環境負荷を紐解いていきましょう。

製造や輸送の段階で生じる負荷

製造時には、綿の栽培や染色のために大量の水や化学薬品が使われます。
環境省の資料によると、服1着を製造するために必要な水の消費量は約2,300リットルにのぼり、500mlペットボトルに換算するとおよそ4,600本分に相当します。
また、日本のファッション産業による年間のCO2排出量は、原材料の調達から製造までの段階で約9千万トンに達するとされています。
出典:環境省|サステナブルファッションとは

 そして、日本で販売されている衣服の約98%は海外から輸入されています。
輸送の段階でも多くの燃料が使われており、船舶や航空機からの排出ガスが地球温暖化の要因となっていることも一つの課題です。グローバルな流通体制は日々の暮らしに便利さをもたらす一方で、環境に大きな影響を及ぼしているといえます。
出典:環境省|令和6年版 環境・循環型社会・生物多様性白書 状況第1部第3章第2節 ライフスタイルの転換

着用後に直面する廃棄の問題

衣類は着用した後にも、「廃棄」という問題があります。
日本国内では2020年に約51万トンもの衣類が廃棄されており、その大半は焼却や埋め立ての処理に回されているとのこと。
出典:環境省|令和2年度 ファッションと環境に関する調査業務 

焼却時にはCO2が発生し、埋め立てられた場合には化学物質が土壌や水質を汚染するおそれも生じます。このような環境負荷を減らすためには、今ある衣類を最大限活かすことが求められるのではないでしょうか。

環境負荷を減らしながら、ものの価値を最大限に活かせる「古着」の選択

衣類の生産と廃棄には膨大な資源やエネルギーが必要となるため、長く使うための工夫が不可欠です。その中でも、最も身近にできるのが「古着として活かす」という選択です。古着として再利用することは、大量生産と大量廃棄の抑制に直結し、環境への負担を軽減するだけでなく、既存の資源を最大限に活用できます。

サステナブルファッションの広がり

近年広がりつつある「サステナブルファッション」という言葉も、その考え方の一つ。サステナブルファッションとは、衣服の生産から廃棄までの過程で、環境や人、社会に配慮しながら、将来にわたって持続可能であることを目指す取組です。一度着用された衣服を再利用する「古着」も、その一部といえるでしょう。

このような取組が広がる一方で、実際の消費行動にはどのように反映されているのでしょうか。

2021年度の調査報告によれば、服を購入する際に「環境や人・社会に配慮した製法や素材かどうか」、「リサイクルやリメイクがしやすいかどうか」を重視する方は多くないといいます。
出典:消費者庁|「サステナブルファッション」に関する消費者意識調査

サステナブルファッションを選ぶ際には、商品の製造背景や素材に目を向けることが必要ですが、古着は、特別な知識がなくてもエシカルな選択の第一歩として気軽に取り入れやすいでしょう。

また、古着を選ぶことは「他者とのつながり」を育む側面もあります。自分にとって不要になった服でも、誰かにとっては新しい価値が生まれるかもしれません。そうした循環を意識することで、社会全体で支え合うアクションへとつながっていきます。

今日からできる「古着を活かす」3つの方法

古着の価値を活かす方法は、決して難しくありません。ここでは、今日から取り入れられる3つの工夫をご紹介します。

1.選び方を見直す
長く着られる素材や、流行に左右されにくいデザインを選ぶことはエシカルな選択の第一歩と言えるでしょう。丈夫でお手入れのしやすい天然素材、シンプルなデザインの衣類を選ぶことで、結果的に経済的なだけでなく、買い替えを減らすことにもつながります。

2.リペアで長く大切に
少しのほつれやボタン外れで処分せず、手をかけて大切に使い続けることもエシカルな選択につながります。リペアによって愛着が深まり、お気に入りの服と過ごす時間も長くなるでしょう。また、デニムをポーチに縫い直すなどリメイクして新たなアイテムを作ることも一つの方法です。

3.ウエスとして最後まで活用
使えなくなった布地は、カットして掃除用の布(ウエス)として活用する方法もあります。布地をそのまま捨てるのではなく、「日常の道具」として役立てる発想を持つことで、使い道がさらに広がるでしょう。自宅で活用できない場合は、自治体やブランドの衣類回収ボックスに持ち込むことで、繊維としてリサイクルされる場合もあります。

古着がつなぐ、人と環境の未来

古着の活用は、特別な行動ではなく「大切にする」という暮らしの延長にあるものです。クローゼットの奥で眠る服も、誰かにとっては新しい1着になり得ます。

「もう一度、誰かのもとへ」。その小さな選択が、環境への負担を軽くし、人や社会とのつながりを育み、さらには未来へのやさしい一歩を踏み出すことにもなるでしょう。

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エシカル消費に関する専門用語を解説しています。
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