
大学から広がるエシカルの輪。 明治大学・東京海洋大学学園祭レポート
「エシカルってどんなもの?」「具体的に何をすればいいの?」と思っても、実際に体験したり理解を深めたりする機会がないという方も多いかもしれません。
今回は明治大学と東京海洋大学の学園祭で、学生が主体となって行われたエシカルを身近に感じてもらうための取組の様子をレポートします。
【明治⼤学】フェアトレードを気軽に味わえる物販と模擬店

まずは明治大学の「明大祭」へ。TOKYOエシカルのパートナーでもある商学部 小林尚朗ゼミの学生が出展する、フェアトレードの展示を訪れました。

明治大学商学部 小林尚朗ゼミ2年生の皆さん
―今回の出展内容について教えてください。
教室展示と模擬店があり、教室展示ではゼミの2年生がフェアトレードの砂糖を使用した羊羹やクッキー、カレー、コーヒーを販売します。3年生はフェアトレードの調味料を使ったチーズボールの模擬店を出店しています。

教室展示の様子
―この出展内容に決めた理由は何ですか。
例年、明大祭はお祭り要素が多く、特にゼミでは自分たちが日頃学んでいることを発表する場が少ないように思えました。そこで私たちがフェアトレードの物販をすることにより、近隣の方や高校生、子どもたちに「明治大学ではどういう勉強をしているのか」を知ってもらうきっかけになると思いました。
それと、私たち小林ゼミには明治大学を「フェアトレード大学」にしたいという目的があります。展示を通して、フェアトレードを学内の学生や教職員に知ってもらうのも狙いのひとつです。

フェアトレードのカレーやコーヒー、クッキー
―これらのフェアトレード製品を選んだのはなぜですか。
小林ゼミでは世界経済論を学ぶ際に、フェアトレードを中心に学習します。世界には不当労働などで対等な対価が支払われない取引も多いため、フェアトレード製品を販売して実態を来場者に知ってもらいたいし、世界に優しい販売をしたいと思いました。
また、フェアトレードという言葉は知っているけれど、実際に消費したり食べたりしたことがない方も多いので、できるだけ気軽に味わえるものを揃えています。

―来場者に期待することはありますか。
フェアトレードを知らない、名前だけ知っているという方はまだまだ多いと思うので、展示や模擬店を通してより深く知っていただきたいです。

小林尚朗先生
―小林先生はゼミの活動を通じて、学⽣にどのようなことを学んでほしいですか。
私のゼミはグローバルビジネス・コースに属していて、将来的に海外と取引したい、海外で働きたいと考えている学生が多いです。ただ現在、グローバル化の深まりにより、自分たちの取引する商品をどこで誰がどのように作ったのかが見えにくくなっています。

小林尚朗ゼミナール3年生によるチーズボールの模擬店
そのため、学生のうちにフェアトレードを学ぶことで、自分の手元に商品が届くまでのプロセスを日頃から意識し、世界中のさまざまな問題が自分と無関係でないことを知ってもらいたい。そして自分たちの手でエシカルな経済社会をつくってもらいたいです。
また、日本の消費者の購買動機としては「その商品がエシカルであるか」よりは、品質やデザインが良い、美味しそう、価格が安いなどの理由で購入することが多いです。その中でエシカルなものをどうやって売っていくか、フェアトレード販売を通してエシカル製品を売る難しさや、どうしたら消費者に理解してもらえるのか工夫する経験をしてもらいたいです。
【東京海洋⼤学】海の落とし物で作るエシカル工作

海洋プラスチックの解説をする学生の皆さん
明治大学の展示を見終えたところで場所を移動し、東京海洋大学の学園祭へ。
環境経済学を専門とする大石太郎先生とゼミの学生、東京都消費生活総合センター職員が共同で実施する、エシカル工作のワークショップを訪れました。集まったのは、幼稚園から小学校の子どもを中心とした参加者の皆さん。最初に学生から海洋プラスチックについての解説があります。
海辺に捨てられたビニール袋やペットボトル、それらの破片を海洋プラスチックと呼ぶこと。プラスチックを食べてしまった魚を人間が食べると、人間の体内にプラスチックが溜まることが説明されます。
現在東京湾には、マイクロプラスチックと呼ばれるプラスチックの小さな破片が約25トンも存在すると言われています。私たちにできることとして、使い捨てプラスチックを減らす、リサイクルを行う、ゴミ拾いに参加するといった行動が挙げられました。

東京都消費生活総合センター職員のお話を聞く参加者
続いて、東京都消費生活総合センターの職員より「エシカル」という言葉の意味について説明があります。エシカルは倫理的、道徳的という意味を持つこと。社会や環境への影響を考えて買い物や行動することを「エシカル消費」と呼ぶと教えてもらいました。
そして今日は学生たちが拾ってきた海洋プラスチックや貝殻、家庭で不要になったビンなどを使用してエシカル工作をしてみようと呼びかけます。

海洋プラスチックや貝殻を手に取る参加者
参加した子どもたちは、材料になる海洋プラスチックや貝殻を手に取り、工作を始めます。
海に落ちていたもの、捨てるはずだったものが作品へと生まれ変わり、鮮やかな飾りの花瓶や小物入れができあがりました。

工作をする参加者

ワークショップで制作された作品
ワークショップが終わったところで、学生の皆さんと大石先生にお話を伺います。

質問に答えてくれた東京海洋大学大学院修士2年の小林さん
―ワークショップを通して参加者にどのようなことを感じてほしいですか。
小林さん:最近は魚離れや海水浴離れが進んでいると言われていますが、ワークショップを通して海にはこんなにキレイなものがある、海が素晴らしいもの、面白いものであると認識してほしいです。子どもたちに海を好きになってもらって、「海をキレイに使おう」という意識が芽生えてくれたらとても嬉しいと思います。

質問に答える大石太郎先生
―大石先生はゼミの活動を通じて、学⽣にどのようなことを学んでほしいですか。
大石先生:エシカルな行動を選択すると、選んだことが社会に反映されていくので、理想の社会を実現する方法のひとつになると思っています。選択の際には、自分の頭で考えて何がいいのか、どういう世の中がいいのか判断できることが大事なので、ゼミの活動を通して学んでいってほしい。エシカルな考え方を理解した上で自分から世の中に働きかけていく、持続可能な社会に貢献していける大人になってほしいです。
学園祭を通してエシカルをもっと身近に

東京海洋大学のワークショップの様子
大学生だけでなく近隣住民や高校生、子どもなどさまざまな世代の人が訪れる学園祭。学生の皆さんの展示を通してエシカルを体験し、理解を深めるきっかけを来場者に提供することができたのではないでしょうか。