世界と日本をエシカルでつなぎ、取り巻くすべての人がハッピーな未来へ【エシカリージャパン合同会社】

エシカルブランドの立ち上げから商品企画や販売、さらには海外におけるサステナブルブランドの日本市場開拓支援を手がける、エシカリージャパン合同会社(以下:エシカリージャパン)。代表の中川さんがインドから日本へ輸入したブランド「I was a Sari」と、オリジナルエシカルブランド「never leather」は、性別や年代の垣根を超えて少しずつ人々の日常に浸透しつつあります。

今回は、「世界と日本をエシカルでつなぐ」を掲げるエシカリージャパンの取組について、中川さんにお話を伺いました。

 

「使う人も作る人も心地よい製品」を届けたい

エシカルへの想いや事業のきっかけを語る中川さん

人や環境に優しい消費行動やライフスタイルを指すエシカルについて、中川さんには独自に3つの解釈があります。

「エコフレンドリーであること、フェアトレードであること、使う人も作る人もどちらにとっても心地よいことの3つを重要視しています。公平公正で、裏側のストーリーを含めて美しいというのが大前提です」

見た目の良さや、エシカルだからこその安心感は、使う人に心地よさをもたらします。また作り手にとっては、手仕事の楽しさや使ってもらえることの喜びが活力に。エシカリージャパンでは、取り巻くすべての人がハッピーになるような製品づくりに取り組んでいます。

事業のきっかけは夫の転勤で移住したインドで、友人から「I was a Sari」のエコバッグをプレゼントされたことでした。同ブランドに魅了された中川さんは、現地の工場に出向き直談判したといいます。

「日本で絶対ウケるから私にやらせてくださいって、提案書を持っていってその場で契約してもらいました」

“私の取り柄は行動力”と笑う中川さんですが、そこには「ムンバイの工房でプライドを持って働く女性たちの活躍の場を広げたい」という強い想いがありました。

 

女性に愛されてきた素材で女性の生きがいを支える「I was a Sari」

華やかなインドの伝統衣装であるサリーを使用した「I was a Sari」の商品

エシカリージャパンを代表するアップサイクルブランド、「I was a Sari」。インドの伝統衣装であるサリーの布を使用したバッグやノートなどを販売しています。

一説には5,000年以上前から女性たちが身に纏ってきたとされているサリー。しかし、近年のファストファッション化の影響により、サリーは大量生産され、大量廃棄されているのが実情です。「I was a Sari」は、その現状を問題視したイタリア・ミラノ出身のファッションデザイナーによって立ち上げられました。

「I was a Sari」の製品は、すべて一点もの。一から作るのではなく、すでにある布を再利用することで、環境負荷を大幅に軽減できる点が魅力です。ムンバイの工房で250名の女性たちが一つひとつ手作業で仕上げています。

中川さんが同ブランドに携わるきっかけとなったのは、インドで見たある光景でした。

「家族で車に乗り、信号待ちをしていたときのことです。赤ちゃんを抱えた女の子が車のドアを叩き、物乞いをしてきました。そのとき私は、たった1枚の窓ガラスの隔たりでこんなにも人生に違いが出るのかと胸が苦しくなりました。この光景は毎日繰り返され、今でも脳裏に焼き付いています。」

ムンバイにはアジア最大級のスラム街があり、そこでは今も女性と子供たちが奥に隠れるように暮らしているのだそう。仕事がない、学校に行けないという状況が当たり前に起きているなか、「I was a Sari」は彼女たちに賃金だけでなく、働く生きがいを提供しています。

 

革にも和紙にも似た、新エコ素材「never leather」

ココナッツ由来の新素材でできた「never leather」のキーケース

エシカリージャパンがもう一つ力を入れるエシカルブランドが、「never leather」です。インドで大量廃棄が問題となっているココナッツウォーターを発酵させ、天然ファイバーを混ぜ込んで作られた100%植物由来の素材を使用した製品を製造・販売しています。

ココナッツから生まれた新素材は、革のように丈夫でありながら、どこか懐かしい和紙を思い起こさせる優しい手触り。ヨーロッパの女性起業家・ザズアナさんが開発し、その魅力に強く惹かれた中川さんがタッグを組みました。名刺入れやキーケース、ブックカバーなどビジネスユースな製品が中心で、一つひとつ職人の手作りです。

「エシカルを生活に定着させるには、女性だけでなく男性にも普段から使っていただく必要があります。なので、エイジレスでジェンダーレスなデザインを心がけています」

「never leather」の特徴は、金具等を除き、撥水加工から染料に至るまでインドの天然素材を利用しているため、使い終わったら土に還ること。中川さんは「さよならの作法」というサービスを立ち上げ、役目を終えた製品を送り返してもらうことで土に還す取組をしています。土から生まれ、土に還る。そのサイクルまでも楽しもうという想いが、「never leather」には込められています。

 

背景まで美しいものを世に出し続けるために

抱える課題と事業にかける想いを語る中川さん

中川さんは特に、人員不足とお客様との接点を作ることの2つが課題といいます。現在、一人で事業を展開しているため、ブランドの全国展開には限界を感じてしまうそう。

また購入の動機として「かわいい」と思ってもらうことを大切にしているため、なるべく手に取ってもらいやすい形で、お客様と接点を持てる場所を作ることが今後の課題と話します。

さらにブランドやメーカーに求められているのは誠実さだと中川さんは語っていました。

「エシカルやサステナブルの概念が浸透していくうえで、生まれる消費者の疑問や反感は通過点の一つ。ブランドやメーカー側は、それに対していかに誠実に説明できるかが問われています」

まず中川さんができることとして、手を組むパートナーを選ぶ際には「人生をかけて応援したいと思えること」「本当に信頼できること」の2つを大切にしているそうです。願わくば、消費者から「エシカリージャパンが扱っているから安心」と思ってほしいから。

見た目だけでなく背景まで美しいものを世に出し続けるために、中川さんは日々奮闘しています。

 

一期一会を楽しんでお気に入りを見つけて

「I was a Sari」と「never leather」の商品を手に取る中川さん

インドの社会問題に目を向け、環境面と人権面の課題解決に果敢に取り組むエシカリージャパン。そこには、一人の女性として、女性の立場を思いやる中川さんの優しさと使命感が溢れていました。

「商品は一期一会。デザインも色も千差万別なので、ぜひ手にとってその違いを楽しんでほしい。立ち上がったばかりのブランドなので、アイデアやフィードバックも大歓迎です」

「かわいいから」は大事。でも、前提に「エシカルだから」があるともっといい。中川さんの想いを知ることで、「I was a Sari」や「never leather」の商品の魅力をぐっと感じられたのではないでしょうか。オンラインショップやポップアップ等で見かけた際は、ぜひ中川さんの想いに耳を傾け、商品を手に取ってみてくださいね。

 

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