脱使い捨て!クリーニング屋さんが推進するエシカル消費【株式会社白洋舍】
118年の歴史を持つ老舗クリーニング会社、白洋舍。まだ着物が主流だった明治39年(1906年)に創業し、服の流行の変化に対応しながら人々の生活を支えてきました。
「人々の清潔で、快適な生活空間づくりのために、たゆまぬ技術革新と感動を与えるサービスを提供し、社会に貢献します」という経営理念のもと、サステナビリティを意識した事業運営を行っています。
今回は、そんな白洋舍のエシカルな取り組みを道田さん・水谷さん・一色さんに伺いました。
クリーニングが服の大量廃棄に歯止めをかける
衣類の大量生産、大量廃棄は、ファッション業界全体の課題。
「できるだけ長く使っていただくことで、洋服のもつ価値を最大化させたい」
白洋舍は、そんな思いで「脱使い捨て」への新たな取り組みをはじめました。
クリーニングによって衣類を適切にケアすることは、寿命を延ばすことに繋がり、結果として服の廃棄率削減の一助となります。つまり、クリーニングを日常的に利用すること自体がエシカル消費。それを広く伝えられればファッション業界がかかえる課題を解決する助けになると考えています。
クリーニングと中古買取のタッグで服の寿命を延ばす
白洋舍×RAGTAGの古着買取サービス
白洋舍がはじめた「脱使い捨て」を目指す取り組みは2つあります。
1つ目は、人気ユーズドセレクトショップ・RAGTAGと提携した「古着買取サービス」 です。白洋舍で使わなくなった衣類を預かり、RAGTAGで買い取ることで、二次流通に繋げます。
「着用中の衣類へのサービスだけでなく、衣類を手放すその瞬間にも寄り添ったサービスもしていきたい」
そんな思いで、「古着買取サービス」は2023年8月に始まりました。2024年8月までの約1年間で、2500点を超える服が集まっています。
「クリーニングのついでに、不要なものを買い取ってもらえて嬉しい」「信頼しているクリーニング屋さんだから安心して預けられる」という利用者からの声も届いているそう。現在はまだ都内の溜池、渋谷、用賀、下丸子、下北沢の5店舗のみですが、今後は少しずつ拡大していく予定です。
2つ目はファッションオンラインストア ELLE SHOP、RAGTAGとの協業で実現した「スローワードローブプロジェクト」です。
洋服を長く楽しむ「スローワードローブ」のコンセプトを広めながら、協業を通して洋服のライフサイクル長期化に繋がる行動変容を消費者に働きかけ、持続可能なファッションライフスタイルを3社で提案していきます。
それぞれの取り組みを通して叶えたいビジョンについて、「これまでの洋服との付き合い方を見直し、すぐに捨てるのではなく、メンテナンスしながら着続けたり、リユースで次の人に繋げるという選択があることを周知したいと思っています。またそれが当たり前な社会になることが理想です。」と語っていただきました。
環境負荷低減への取組み
真剣な眼差しでドライクリーニングの溶剤を研究している様子
ドライクリーニングは水洗いと異なり、洗浄溶剤を蒸留やろ過しながら繰り返し使用するため、エシカルな側面もありますが、世界的な環境規制のなかで、使用可能な溶剤が制限されていく状況もあります。
白洋舍は、このような課題解決のため「洗濯科学研究所」で研究を重ねています。
白洋舍では、汚れの種類や衣類の素材によって最適な方法を選んで洗浄しています。洗濯科学研究所で開発した環境に配慮した方法へ、どんどんバージョンアップすることで、技術革新をし続けます。
よりきれいに、より環境に配慮した洗浄方法を研究し、クリーニングと環境保全の両立を目指しています。
複雑なデザインの服はリサイクルの敵?エシカルな服の選び方を知ろう!
衣類の繊維を拡大して研究する様子
「服を長く着続けるには、クリーニングやリサイクルのしやすい服を購入することも大切」
例えば、皮革・スパンコールなどの異素材が使われている服などは、繊維リサイクルの際に処理コストや分類の複雑さが増したり、リサイクルの対象から外れてしまう可能性があります。一方でシンプルなデザインでクリーニングしやすい服はケアしやすいため、長く着続けられます。
エシカル消費を叶えるには、購入後のことも考えた行動も重要なのです。
クリーニング=「脱使い捨て」を伝えるイベントを実施
工場見学の会場である多摩川工場の外観
クリーニングは服を長持ちさせるサステナブルな事業。しかしクリーニングが身近なエシカル消費であることを知らない人が多く、十分に活用されていないのが現状です。
「小さい子どものうちからクリーニングを身近に感じてもらうことで、成長したときにファッションを長く楽しむための一つの方法として覚えていてほしい」
そんな思いから白洋舍は、さまざまなイベントを開催しています。
2024年7月に開催したのは、子ども向け企業体験知育アプリ「ごっこランド」とのコラボによる、子ども向けワークショップ。水洗いとドライクリーニングの比較実験や、しみぬき実験などを通し、子どもたちに服を長く着ることの大切さを伝えました。
工場見学の様子
他にも、工場見学を定期開催し、大型洗濯機やプレス機、プロのアイロンがけなどを見ていただける機会も設けています。2023年11月には大田区の「おおたオープンファクトリー」に白洋舍多摩川工場が参加。地域のみなさまに、クリーニングの工程にどのようなものがあるかを紹介しました。参加者には、白洋舍が取引先ホテルに提供しているタオルやシーツを紙として再利用したメモ帳をプレゼントしました。
工場見学のお土産のメモ帳
白洋舍はこのような活動を通して、エシカル消費が未来に普及し、サステナビリティへの取り組みが当たり前になる社会を目指しています。
クリーニングが地球と人々の生活を守る
白洋舍の洗濯科学研究所で働く藤本さん
白洋舍は、クリーニングを通して人々の生活に寄り添い、さらに他社との協業サービスや新しい溶剤の開発などの取り組みを通して地球環境を守ろうとしています。
最後にこの記事を閲覧している方へ、メッセージをいただきました。
道田さん「ファッションを楽しみ、長く愛用することはクリーニングでお手伝いできます。お困りごとがあれば、ぜひお近くの白洋舍にご相談ください」
水谷さん「これからも定期的にTOKYOエシカルマルシェに出展し、ご家庭でできるしみぬき方法などを紹介していきます。ぜひお気軽にご参加いただけると嬉しいです」
一色さん「環境省によると、今所有している1着を現在よりも1年長く着ることで、日本全体で4万トン以上の衣類の廃棄量が削減できるそうです。もう着れないかもと諦めてしまっている服も、ぜひ白洋舍にお任せいただければと思います」
クリーニングを適切に利用することが自然とエシカル消費につながっていく。環境に配慮しながらファッションを楽しんでもらうための、白洋舍の挑戦はこれからも続いていきます。