服が肥料に変わる? 銀座で開催中の「サーキュラーファーム ミュージアム」を体験

わたしたちが普段身につけている洋服が、野菜を育む肥料になる。そんな新しい循環型の社会がもうすぐ当たり前になるかもしれません。

2023年4月22日~7月31日の期間限定で東急プラザ銀座7階にオープンしている「サーキュラーファーム ミュージアム」では、衣料から肥料を生成し野菜を育てる新しい循環モデル「サーキュラーファーム」の仕組みを知り、体験できるブースが展示されています。「衣」と「食」を循環させるこの新しいシステムを提唱しているのは、ミュージアムの主催者であるクレサヴァ株式会社とアルーフホーム株式会社。天然繊維だけでなく化学繊維をも肥料に変えられるという画期的なテクノロジーを用いた取り組みについて見ていきましょう。

石油産業に次いで環境への負荷が大きいとされるファッション産業(※)。サステナブルな生産方法やリサイクル素材の活用に取り組む企業は増えているものの、その過程でCO2が排出されるなど課題は残ります。また、廉価で大量生産が可能なポリエステルは、大量廃棄の引き金になるだけでなく、洗濯をするたびにマイクロプラスチックとして海に流れ出て海洋汚染を引き起こします。

クレサヴァとアルーフホームは、ファッションの現場におけるこうした課題に目を向け、天然素材を採用したライフスタイルブランドの運営とともに、衣類を「捨てる」のではなく「土に還す」という考え方に基づいた「サーキュラーファーム」の仕組みづくりを目指しました。

※ 国連貿易開発会議(UNCTAD)による発表

2021年にスタートしたライフスタイルブランド「アルーフホーム」は和紙、コットン、シルクなどを組み合わせた12種類の天然繊維を取り揃え、身体と環境に優しい衣類や生活雑貨を展開する。

クレサヴァが開発したのは、衣類を破砕→粉砕→発酵→ペレット化の4ステップで肥料に変えていくシステムです。注目すべきは、コットン、ウールなどの天然繊維のほか、ポリエステルなどの化学繊維までもがまとめて破砕され、ペレットの原材料になっていることです。ここにはクレサヴァが独自開発した技術が使われており、現在特許申請中なのだそうです。

ミュージアム内の体験ブースでは、粉砕した繊維にもみ殻や大豆などの有機物と水を混ぜる発酵の過程を実際に体験することができます。

原材料となる衣類

粉砕後

有機物と混ぜ合わせて発酵へ

発酵したものを1~2cm程度の円柱型に造粒したものがペレットになります。提携先の農家に届けられたペレットは、土壌の微生物を活性化し、農作物の栄養価を高めます。京都・美山にあるクレサヴァの自社ファームで行われた土壌微生物多様性・活性値(BIOTREX)の比較調査(※)では、天然繊維のみのペレットを混ぜた肥料で1.85倍、化学繊維を含む肥料でも1.23倍、土壌が活性化されることがわかっています。

協力:株式会社DGCテクノロジー

「サーキュラーファーム」のペレットは通常のペレットと変わらない価格帯ですでに農家向けに販売されており、評判も上々とのこと。クレサヴァのマーケティング&PRディレクターの森陽子さんは、自社の取り組みの意義について次のように語ってくれました。

「衣類を衣類としてリサイクルする仕組みによって循環を生みだすことには限界があります。肥料化という新たな可能性を提示することで、幅広い業界にメリットをもたらすより大きな循環モデルが生まれたと思っています。また、プラスチックなどを発酵によって無害化する技術は、ファッション以外の分野での活用も大いに期待できます。今後はクレサヴァのビジネスを『衣』『食』から『住』へと展開し、多方面からサステナブルな暮らしを創造していきたいと考えています」

例えばコンポストに服や粗大ゴミを入れて、家庭菜園の肥料をつくることができる……。そんな豊かな未来像を想像させてくれる「サーキュラーファーム ミュージアム」に、ぜひ足を運んでみてください。

「サーキュラーファーム ミュージアム」

会場:東急プラザ銀座7階

会期:2023年4月22日~7月31日

営業時間:11:00~21:00

公式サイト:https://ginza.tokyu-plaza.com/shop/detail.html?_id=21900 

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