若者の意見を取り入れ、さらなるエシカル消費の推進を。 TOKYOエシカルカンファレンス実施レポート
2024年11月15日(金)に、新宿パークタワーホールにて今年度2回目のTOKYOエシカルカンファレンスが開催されました。
TOKYOエシカルでは、パートナー企業・団体が集まり、東京都との連携、またパートナー企業・団体同士の連携を強化することを目的に、定期的にカンファレンスを開催しています。
今回は、多くのパートナー企業・団体が集い、「未来を担う若者の意見や考えを取り入れたエシカル消費の推進」をテーマに講演やパネルディスカッションを行った当日の様子をレポートします。
さまざまな調査から浮かび上がるエシカル消費の現状
久故 雅幸生活文化スポーツ局次長
カンファレンスは、久故 雅幸生活文化スポーツ局次長の挨拶により始まりました。昨年から始まったカンファレンスについて、パートナー企業・団体からさまざまな協力をいただいたことを述べます。
そして、「この後行われる大学生と企業のパネルディスカッションなどの本日のプログラムを経て、それぞれの話から、新たな取組につながるヒントをいただきたい」と語りました。
続いて、生活文化スポーツ局消費生活部より、TOKYOエシカルキャンペーンの実施状況報告と、エシカル消費の実態把握アンケートについて説明があります。
2024年10月18日(金)〜11月30日(土)に行われたTOKYOエシカルキャンペーンにて、パートナー企業・団体の店頭で掲示したポスター・POPの様子や、オウンドメディア・SNSでの情報発信の様子がスクリーンに映し出されます。また、東京都の取組として、都営交通やWEBに広告出稿したことを報告しました。
また、10月に都内在住者へ行ったエシカル消費の実態把握アンケートでは、 エシカル消費という言葉の内容まで含めた認知が課題であり、今後の対策としてエシカル消費の具体的なイメージや情報を提供することの必要性や、若年層に対してはSNSを用いて情報発信していくことが効果的であることなどが報告されました。
TOKYOエシカルアドバイザー・末吉 里花氏(一般社団法人エシカル協会代表理事)
続いて、TOKYOエシカルのアドバイザー・末吉 里花氏による講演が行われます。
日本初のエシカル市場規模調査では、2022年度の日本のエシカル市場規模は約8兆円。これはイギリスの約1/3の規模にあたりますが、末吉さんが驚いたのは10代の3割近くが「エシカルじゃないと買わない」という回答をしたという事実。
調査結果によるとZ世代・α世代はエシカルな選択をしたいと思う人が多く、これは一般社団法人エシカル協会の活動からも肌感覚で感じていると語ります。
また、気候変動対策に対する意識調査から、エシカルな活動に対して日本人はネガティブなイメージを抱きがちであることに触れ、「エシカルな選択は私たちの生活の質を高めるポジティブなものであるということを、若者とともに広めていくことが大切」と述べます。
そして、自治体と地元企業・団体が手を組んだエシカルプロジェクトの例を紹介し、「1社だけでなく連携して取り組むこと、特に地域社会との連携が大切」と連携の重要性を説きました。
企業、学生がそれぞれの立場で語るパネルディスカッション
カンファレンスの後半では、エシカル消費の実態把握アンケートの結果を交えながら、引き続き「未来を担う若者の意見や考えを取り入れたエシカル消費の推進」をテーマにパネルディスカッションが始まります。
ステージにはモデレーターとしてTOKYOエシカルのアドバイザー・坂口真生氏、パネラーとして株式会社ミラサスの堀澤憲己氏、Earth hacks株式会社の石﨑健太氏、明治大学商学部小林尚朗ゼミ所属の学生、ファム・トゥン・ラムさんと込山拓人さんが登壇しました。
明治大学商学部 小林尚朗ゼミ ファム・トゥン・ラムさん
最初に普段行っているエシカルな活動について、ファムさんは昨年、循環型社会の先進国・フィンランドに留学し、大学の学食でフェアトレードのコーヒーが提供されるなど、エシカル消費が生活に浸透している様子を目にしたと語ります。
明治大学商学部 小林尚朗ゼミ 込山拓人さん
込山さんは、ゼミで行っている産学連携プロジェクト「Stepping Stone」にて、インドのフェアトレードコットンを原料としたバッグやポーチを商品開発し、販売までを担当したと話しました。
坂口氏は学生2人に向け、「先ほどの調査結果でも出てきた、エシカル消費の認知度を上げるにはどうしたら良いかを若者視点で話してほしい」と問いかけます。
ファムさんは、「消費者に当事者意識を持ってもらうこと」が最も重要だと話します。
「例えばフェアトレード商品の購入は、先進国の人が一方的に発展途上国の人を支援する活動ではなく、公正な価格を支払うことで品質への再投資となり、巡り巡って消費者のためになる。そのことを意識して、継続的にフェアトレード商品を購入してもらうことが大事」と語ります。
込山さんからはファムさんが話した「当事者意識」について、「当事者意識を持つためには、まずは生活の中にフェアトレード商品を取り入れるなど、自分の身の回りから始めていくべき。周りの人にエシカルな活動を勧めようと思っても、普段から自分が触れていないと難しい」という意見が挙がりました。
続いて、堀澤氏と石﨑氏のエシカルな活動についてお話を伺います。
株式会社ミラサス 堀澤憲己氏
堀澤氏は、株式会社ミラサスが運営するSDGs・サステナビリティに特化したメディア「MIRASUS」にて学生が企業へ取材に行くプロジェクトを行い、学生側は企業のサステナブルな取組を知り、企業側は自社のサステナビリティ活動に対する学生の意見を聞く場を設けたと話します。
堀澤氏はプロジェクトを通して感じたこととして、「若い学生ほどエシカルという存在が当たり前になっている」、「数年前は学生との共創をしたくても何から始めたらいいか分からないという企業が多かったが、徐々にハードルが下がり、企業側から『こういった取組をしたいのだが実施している学生団体はいるか』と提案をいただくことも増えた」と述べました。
Earth hacks株式会社 石﨑健太氏
石﨑氏は、Earth hacks株式会社では、企業や自治体が学生と一緒に脱炭素の課題を解決していく共創型プロジェクト「デカボチャレンジ」を運用中で、全国から4,000名もの学生の応募があるほどの人気だと語りました。
これほど人が集まった理由として石﨑氏は、「企業が取り組む社会課題を一緒に解決したいと考える若者も増えてきている一方で、然程関心が高くない若者を取り組むために、大学生の関心事である就活を入口の1つとして見せることも意識している。動機付けは如何なる形であれ、5日間参加すれば脱炭素に対する意識は少しずつ変容してくるので、『入口をいかに下げるか』を意識している」と話します。
パネルディスカッションの様子
ここで込山さんから石﨑氏へ質問があり、Earth hacks株式会社の取組の話にあった「デカボスコア」について、「社会的にペーパーレスは進んでいるが、紙の需要は完全にはなくならないものだと思う。だからこそ脱炭素につなげていくのが重要だと思うが、紙に関する事業はあるか」と問いかけます。
石﨑氏は「会社の名刺が太陽光発電を使って作られたもので、CO2削減率を示す28%のデカボスコアがついている。消費者が理解しやすく、気付きやすいように数字で示している」と答えました。
続いて坂口氏から、「エシカルな取組について現在企業が求められる規模はどのくらいのものか」と質問があります。
堀澤氏は、「エシカルな取組のニーズは企業の間で高まっていると思うが、 規模はまだまだ小さい印象。特に学生と一緒にやる場合は、ミニマムな取組からスタートすることも多いが、ミニマムでも全然いい。まずはやることが大事だと思っている」と回答しました。
他にも、エシカルに対する企業の取組について、企業は学生に対し安心してチャレンジできる環境を整えてほしいこと、企業のエシカルな活動をもっと前面に押し出してほしいことなどが議論されました。
TOKYOエシカルアドバイザー・エシカルディレクター 坂口真生氏
最後に坂口氏から、企業が学生だけではなく、業界内など横の連携も含めてエシカルの輪を大きくしていかなければならない。そのために今後のTOKYOエシカルの取組や、この後行われる交流会を利用してほしいと述べ、締めくくりました。
パートナー企業・団体が手を取り合ってエシカルを世に広める
カンファレンスの最後にはパートナー企業・団体同士の交流会も開かれ、互いのエシカルな取組や思いを共有する様子が見られました。
TOKYOエシカルをきっかけに新たな連携が生まれ、エシカルの輪がさらに広まっていくことが期待される一日となりました。
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