御徒町駅前でサーキュラーエコノミーを体験。コンポストや資源回収、リユースを発信したマルシェ「循環生活コトハジメ」をレポート

循環型ライフスタイルの楽しさを実感し、暮らしに取り入れるきっかけを提供する「循環生活コトハジメ」が、2024年3月2日(土)に初開催されました。

このイベントは、2023年6月に循環型ライフスタイルへの転換に向けて協定を締結した台東区、株式会社 大丸松坂屋百貨店、ローカルフードサイクリング株式会社の三者によるもの。御徒町南口駅前広場(おかちまちパンダ広場)を会場に、子どもたちが自ら販売を行うキッズフリーマーケットや、アップサイクルやフードロス削減、エシカルなど資源の循環をテーマにしたマルシェ、コンポスト講座やアップサイクル素材を使ったものづくりを体験できるワークショップなど、さまざまなプログラムを実施。台東区で暮らす人々や御徒町を訪れた観光客など、多くの人が足を運びました。

キッズフリーマーケットでは、子どもたちが使わなくなった洋服やおもちゃ、本などを出品。一つひとつの商品に自分で値付けをし、値札やPOPを書き、「このおもちゃはたくさん遊んだから」「この服はもう小さくなっちゃったから」などの出品理由を来場者に伝えながら販売します。こうして自分の持ち物と向き合い、「捨てる」以外の選択肢を知ることは子どもたちの消費に対する意識を変えるきっかけとなるはずです。

キッズフリーマーケットの様子

マルシェには、蔵前のサステナブルなカフェと日用品のお店「KAWA KITCHEN / S.」、フードロスとCO2削減を推進する上野のZERO株式会社、谷中を中心に飲食店など多くの事業を展開する「HAGISO」など、台東区を拠点とする11軒のお店や企業が出店。有機野菜を使用したフードやドリンク、端材をアップサイクルした日用雑貨などを提供しました。

サステナブルなライフスタイルの普及を目指すKAWA KITCHEN / S.。今回は、竹製の歯ブラシやヴィーガンのデンタルフロス、折りたたみ式のステンレス製ストローなど、環境にやさしい雑貨を販売

フードロスとCo2削減に取り組むZERO株式会社。さまざまな理由で発生する、まだ美味しく食べられるのに捨てられてしまう食品をフードロス削減BOX「fuubo」で販売しています。「fuubo」によるCo2の削減効果を数値化することで、企業や自治体のSDGsの取組みを支援しています。今回は、フードロス商品をお得にもらうことができるミニゲームを開催

谷中を拠点に、地域の食材を活用したさまざまな事業を展開しているHAGISO。今回はカフェオレベースや自家製ジンジャーシロップなどの人気商品をはじめ、HAGISOのグループ店「asatte」の普段は捨ててしまう野菜や果物の皮を使ったジェラートやクレープも販売

障害者支援施設で製造される焼き菓子などを取り寄せ、コーヒーとの詰め合わせ商品として販売する「珈琲焙煎処縁の木」。蔵前の事業者を中心としたアップサイクルプロジェクト「KURAMAEモデル」も運営し、コーヒーごみを原料としたアップサイクルプロダクトも開発しています

お酒を飲みながらものづくりを楽しむことができる大人のためのエンタメスポット「Rinne.bar」。家具などをつくる際にどうしても出てしまう半端な木材を活用した「KOPPA kun」制作キットや、生地の端切れから生まれた「BON BON BROOCH」制作キットの販売とワークショップを実施しました

鶯谷のビルの屋上を利用して都市養蜂を行なう「鶯谷ハニーラボ」。マルシェでは、上野・鶯谷周辺の花々から採れたハチミツのほか、台東区産のハチミツを使ったハニーマスタード、焼き菓子、ビールなどを販売

就労継続支援B型ルーツが運営する珈琲と焼き菓子のお店「IRODORIcafe」。店頭に並んだ焼き菓子には、担当したスタッフが手書きをしたイラストカードが添えられています

「農と食でローカルとつながる、地域がつながる」がコンセプトの「田心カフェ」。亀戸大根や江戸千住葱などの江戸東京野菜や山菜などの旬の無農薬野菜を販売

主催の三者もそれぞれブースを出展。台東区は、生ごみ処理の仕組みなど区が行っている資源循環についてのパネル展示に加え、ライオン株式会社と協力し、使用済み歯ブラシの回収BOXを設置。使い終わった歯ブラシをリサイクルして作られた植木鉢や定規、手鏡なども展示していました。

台東区とライオン株式会社の出展ブース

大丸松坂屋百貨店は、衣料品回収プロジェクト「ECOFF」の回収ボックスを設置。日本の衣料廃棄物は年間50万トンを超えると推計されているなか、「百貨店として衣料品を販売していくうえで、地球温暖化や資源の枯渇を少しでも防ぐために、お客様とともに世の中を変えていきたい」という思いから2016年にスタートしたこのプロジェクト。回収した衣料品は「あらゆるものを循環する」をコンセプトに掲げるリサイクル会社「JEPLAN」と協力し、リユースしたり、ポリエステルなどにリサイクルし、再製品化したりしています。

「ECOFF」の衣類回収ボックス

また、同じく大丸松坂屋百貨店から、天ぷらを揚げた後などの使用済み食用油から持続可能な航空燃料「SAF(サフ)」をつくるプロジェクト「Fry to Fly Project」の取組を伝えるブースも。現在、国内では国産SAFの大規模生産が可能な設備がないため、国内の食用油は海外に輸出され、SAFとなって日本にまた輸入されているという状況なのだとか。輸送にかかるCO2排出を削減するためにも、国内でのSAF生産を可能にし、国内の航空会社が使用する、という国内での資源循環を生み出すことが重要です。

現在、プロジェクトに賛同した94の企業や自治体(24年2月末現在)が参加しており、2025年までに国内の家庭や店舗で回収した食用油からつくられる初の国産SAFの供給を目指しています。ブースでは、食用油を回収してからその油がSAFになり、実際に飛行機に給油するまでの工程を知ることができるVR体験と家庭からの使用済み食用油の回収も行われていました。

Fry to Fly Project

ローカルフードサイクリング株式会社は、家庭で生ごみの堆肥化ができる「LFCコンポストセット」と、コンポストの堆肥を使ってつくられた野菜を使用した加工品を販売。また、「自分で出した生ごみが堆肥になり、それを使って野菜を育て、食べるという食の循環を感じてほしい。特に都会の人に、少量でもいいから野菜を育てて食べる体験をしてみてほしい」という思いから、「はじめてのLFCコンポスト講座」と「ガーデニング講座」の2つのワークショップも開催しました。

ワークショップの様子

コンポストは家庭でできるサステナブルな習慣の一つですが、臭いや虫が気になり、特に都市部ではなかなか手を出しづらいと感じる人も少なくないでしょう。「はじめてのLFCコンポスト講座」では、通気性やデザインを考慮してつくられた専用バッグ「LFCコンポストバッグ」を使い、誰でもベランダなどで気軽にできるコンポストの始め方をレクチャー。「ガーデニング講座」では、参加者が実際にコンポストでできた堆肥を使いながらルッコラとベビーリーフの育て方を学んでいきました。

LFCコンポストセットを使ったガーデニングや堆肥づくり。LFCコンポストバッグは国内のペットボトルをリサイクルしてつくられています

ローカルフードサイクリング代表のたいらさんは、活動の根底にある思いについて「半径2kmという小さな世界で、暮らしに必要なものが循環していく構造を広めていきたいと考えています。コンポストを使って野菜を育てると、農家さんの苦労を少し理解することができたり、採れたての野菜がどんなにおいしいかということを知ることができます。コンポストはごみを減らすだけでなく、さまざまな物事を自分ごととして捉えるきっかけになると思います」と語ってくれました。

大盛況となった「循環生活コトハジメ」。株式会社大丸松坂屋百貨店 未来定番研究所の笠井さんは、取組の今後について次のように語ってくれました。

「台東区はさまざまな資源の回収に積極的なので、区民のみなさんにも循環型ライフスタイルの意識が浸透してきているのではないかと思います。松坂屋上野店でも、毎月第3月曜日にコンポストの堆肥回収を行っており、そうした活動を足がかりにして循環型ライフスタイルを広めていけたらと思います」

また、ローカルフードサイクリング株式会社のたいらさんも「台東区は東京23区のなかでもっとも面積の小さい地域ですが、面積に対してレストランの数がもっとも多い街でもあります。都会には資源がないと言われますが、実は生ごみという最高の資源が集まっている場所なので、生ごみを循環させて緑に変えていくための試みを進めていく場所として最適です。台東区さん、大丸松坂屋百貨店さんと一緒に新しい文化をつくっていきたいです」と今後の展望を話してくれました。

地球環境や社会のため、と考えると途方もないことのようですが、まずは自分の暮らしを少しずつサステナブルにしていくことで、循環型ライフスタイルの輪が広がっていきます。そうした思いを持って活動を行っている企業や店、人がつながる場にもなった「循環生活コトハジメ」。官民が協調することで生まれるシナジーとエシカルな広がりに、今後も注目です。

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