“支援”以上の関係を築く「福祉+フェアトレード」の仕組み 「マジェルカ」から広がるウェルフェアトレードな循環とは?

障がいのある人たちのものづくりを、支援としてではなくクリエイティビティの視点で正しく評価し、彼らの収入や生きがいにつなげていく。吉祥寺の生活雑貨ショップ「マジェルカ」は、そんな新しい循環の仕組みの起点になっているお店です。

障がいのある人たちが福祉施設で制作した商品を、独自の視点でセレクトしてきたマジェルカの代表・藤本光浩さんに、お店のテーマである「ウェルフェアトレード(=福祉のフェアトレード)」のエシカルな意義について話を聞きました。

マジェルカ代表 藤本光浩さん

ーマジェルカさんは、障がいのある人が手しごとでつくった生活雑貨を、支援のためではなく、魅力的なプロダクトとして世間に紹介した先駆者でもあります。改めて、マジェルカのようなお店を始めることになった経緯について教えていただけますか。

私はもともと企業でバイヤーをしていたのですが、「人と環境」をテーマに買い付けをしていた時に見つけた商品が、障がい者が福祉作業所でつくられたものであることを後から知り、それから興味を持って調べるようになりました。

当時は福祉作業所の商品というとクッキーや押し花のしおりくらいで、売られる場所も近所の福祉バザーが中心だったのですが、作業所ではそういったもの以外にもさまざまな商品がつくられていたのです。それらはバイヤーの視点から見ても間違いなく素敵なものばかりで、そういう魅力を持った商品が届くべき人のところに届いていない状況はあまりにもったいないことではないかと。

それまでの福祉支援は、支援「する側」から「される側」への一方向でした。支援すること自体はもちろん大切なことですが、きちんとした売り方できちんと価値を認めてもらえれば、双方向の支え合いが成立するはずだと思ったのです。

ーそれがマジェルカの方針である「ウェルフェアトレード」なのですね。

そうですね。商品価値をどう届けるかを考えた時に、「障がいのある人たちがつくったから買ってください」という方法ではなく、商品そのものの良さを第一に見せていきたいです。彼らがつくる商品には、独特の“あたたかさ”があると思っていて、それは私たちの生活を豊かにしてくれるものになり得るし、その豊かさは障がいのある人たちが自立して活躍することにもつながる。

そうやって、障がいのある人たちの優れた能力をきちんと伝えて、そこに価値を感じてくれる人とのつながりを生んでいけば、お金のやり取りだけではない、気持ちの上でもフェアな関わりを築いていけると思っています。

まずは、マジェルカでの買い物をきっかけに、こうした障がい者福祉のかたちがあるということを知ってもらいたいです。障がい者を支援しましょう、と訴えかけることも重要ですが、そうしたものに関心を持つ機会がなく、他人ごとだと思っている人たちのための入り口も必要だと思うのです。フェアトレードは少しずつ認知が広がっていますから、「福祉のフェアトレード」が障がい者と対等に関わるきっかけとして浸透してほしいですね。

レザーの端切れを一針一針縫いとめたキーホルダー

心の弾むアートが描かれたポーチ

古いテントの生地を再利用し、ハンドペイントを施したバッグやポーチ

一点ずつ手描きして作られた土鈴の厄除鬼

―お店をオープンしてから13年。ウェルフェアトレードが浸透してきた実感はどんな場面で感じますか。

同様のコンセプトを持ったお店も増えてきており、広がりを感じる面もあるのですが、十分に浸透しているとは言えません。さまざまな課題がありますが、考えていくべきは、供給する側の意識や仕組みです。障がいのある人への支援プログラムとしての商品生産は、普通のプロダクトの場合とは違って、メーカーやブランドが売上効率や経済原理だけで生産計画を立てるのではなく、生産すること自体が目的になっていることがあります。

マジェルカでは、商品の価値を高めて少しでも魅力あるものづくりにつながるように、作業所のスタッフさんたちの提案に対して、デザインやマーケティングの知見を駆使したフィードバックすることも多くあります。障がいのある人たちががんばってつくったものだから、というところで立ち止まって可能性を狭めてしまうのではなく、商品づくりの上でもつくり手と売り手の対等な循環を生み出していけたらと思います。

―マジェルカの取組の価値を理解してもらいながら、10年以上にわたってお店の運営を続けるのは簡単なことではないと思うのですが、継続の秘訣はなんでしょうか。

消費者の方たちに値付けを理解してもらうことがとても重要です。商品の値段の背景には、彼らの社会参加を支えるという見えない価値がありますから、活動に共感し、納得して購入してもらえるよう私たちからも発信をしています。また、商品だけではなく、活動自体の支援のために月1000円の寄付をしてもらうマンスリーサポートも一昨年から実施しており、賛同してくれる方が今は130人います。こうした共助の上に運営が成り立っているんです。

―今後ウェルフェアトレードを通して、どのように障がいのある人とそれ以外の人たちとの接点を増やしていきたいと考えていますか。

いかに地道に商品の魅力を伝えていき、たくさんの人にウェルフェアトレードの仕組みを知ってもらうかを考えています。その魅力を入り口に、障がい者と対等な立場での接点を持つことができたり、彼らの活躍の場を創出することに価値を感じたりする人が増えてくれればいいですね。最近は、お客さん以外にもサポーターやボランティアというかたちでマジェルカに関わってくれる人が増えていて、現在は20人のボランティアの方が定期的にお店に立ってくれています。今後はマジェルカの活動自体を広げていけるような、おもしろい仕組みを模索できたらいいなと思っています。

 

マジェルカのマンスリーサポートについて:

https://www.majerca.com/monthly-supporter/

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