企業と若手デザイナーが繋がるアップサイクルファッションコミュニティ「NewMake」

“アップサイクル”を軸にクリエイターと企業が交わる場所

アパレル業界で問題視されている大量の衣料廃棄物。2021年にスタートしたファッションコミュニティの「NewMake(ニューメイク)」は、この課題と向き合うために、アパレルを扱う企業とクリエイターを繋ぐハブとしてユニークな取組を展開しています。

コミュニティの活動拠点となるのは、原宿にある「NewMake Labo(ニューメイクラボ)」。ここには、企業から寄付・提供された衣服や靴が集まり、それらを素材にしたアップサイクルファッションを制作するための機材や道具が揃えられています。ラボに出入りしているのは、若手のファッションデザイナーやパタンナーをはじめ、建築士や専門学生など、多様な個性を持ったコミュニティーメンバーです。

ラボの壁に陳列されたたくさんのミシン。これらはすべてミシンメーカーのブラザー販売による提供をうけたもの。そのほとんどがショールームの展示に使われていたサンプル品なのだとか。

「NewMake Laboにある機材や生地、糸などは、すべて企業から提供していただいた規格外商品やサンプル品、B級品などです。コミュニティメンバーは、それら全てを無料で利用することができます」。そう説明してくれたのは、NewMakeLaboの運営を担うコミュニティスタッフの瀧本かれんさん。

「ラボに用意されている設備や資材を使いながら、ブランドから提供していただいた服に新たなデザインを施し、アップサイクルファッションとして生まれ変わらせます。廃棄される運命だった服に新たな価値を持たせるという意味で、『“リ”メイク』ではなく『“ニュー”メイク(NewMake)』なんです。

ブランドから預かった服をアップサイクルする際に私たちが大切にしていることは、捨てられてしまうはずだった服とはいえ、最初から捨てるつもりで作られた服はひとつもなく、どれも思いを込められて作られたものだということです。クリエイターたちには、そんな思いやブランドヒストリーをしっかり理解した上で、自分のクリエイションをいかした制作をしてもらうことをお願いしています」

自身もデザイナーである瀧本さんが、アウトドアブランドのコールマンとコラボレーションして作った寝袋をアップサイクルしたドレス

企業コラボの機会を用意して、若手クリエイターに新たな活躍の機会を

NewMake Labo は2023年7月で発足から2周年を迎えました。これまで、ここから生み出された作品を展示するイベントやファッションショーなどを開催してきましたが、コミュニティメンバーの数は1000名を超え、顔ぶれが多彩になったことでコミュニティの形もアップデートされてきています。

一般家庭のクローゼットに眠っている衣服を使って、リカちゃん人形の洋服を手作りする企画「100 My Licca」

服だけでなく、スニーカーのアップサイクルも多数。廃棄予定品を中心に計 100 足のフットウェアを協賛企業に提供してもらい、100 人の クリエイターがそれぞれのデザインを施す「100Sneakers100NewMakers」という企画を継続的に行なっており、今秋に第3弾を開催予定

「このプロジェクトのコンセプトには、衣服の大量廃棄の問題と向き合うということだけでなく、活躍の場を探している若手のクリエイターやものづくりの道を志す専門学生たちに、その手助けになるような場所を用意したいという思いもありました。この2年間で、メンバー同士が新たなプロジェクトや仕事を一緒に生み出していくような例も出てきています。

NewMakeが果たす最大の意義の1つは、企業やブランドと公式にクリエイターたちがコラボレーション制作を行えることです。クリエイターたちが個人の活動としてアップサイクルの服を作っても、企業側にその価値は届きにくい。一方、企業やブランド側は、自社内ではどうしても再活用のプランやサイクルを立てにくい場合がある。そうした課題を抱えた両者が出会い、新たな可能性を一緒に追求していける場にしたかったのです」

自由にものづくりをしたいクリエイターと、廃棄品を抱えた企業やブランドを繋げることで、アンオフィシャルで二次的なものとして扱われがちだったアップサイクルアイテムを、より価値の高いものにしていく。こうした取組は、海外を見渡してもあまり例がないのだとか。

業界からの注目も大きくなってきたNewMakeですが、その活動は今後どのように発展していくのでしょうか。

「今までは運営スタッフが中心となってプロジェクトを進めていましたが、今後はコミュニティメンバーが先導して進めるプロジェクトも生まれてくると思います。そうすることで、より自由な発想で多くのアイデアが生まれていくと思います。ものづくりが好きな人たちが本気で遊ぶことができる場所づくりを目指していきたいですね」

ファッションの街 原宿から生まれた、大量生産・大量消費を循環型にアップデートする新たな取組。これからの展開に注目です。

公式サイト:https://www.andstory.co/communities/1
Instagram:https://www.instagram.com/newmakebackyard/

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