
TOKYOエシカルアンバサダー鈴木福さんとアドバイザー坂口真生さんの対談
今回の対談は、俳優で、「TOKYOエシカル」アンバサダーの鈴木福さんと、「エシカル・ディレクター」として長年エシカルを社会に発信し続けている「TOKYOエシカル」アドバイザーの坂口真生さんにお話いただきました。
みなさんも、日々の生活の中で気づかずに出会っているかもしれない「エシカル消費」。
「エシカル消費」とはなにか、なにをしたらよいかのヒントを、鈴木さんと坂口さんとの対談を通じてご紹介します。
実は誰にとっても身近な「エシカル消費」
坂口 鈴木さんにとって、エシカル消費は身近な言葉でしたか?
鈴木 聞いたことはありましたが、あまり身近なものではなかったです。たとえば「サステナブル」という言葉は、もう少し具体的にイメージできます。「エコ」という言葉もありますよね。「エシカル」はそこまで知られていない言葉だなあという印象です。
坂口 場合によったらとっつきづらいと言われることもありますよ。僕は自分自身がエシカルオタクだと思っているのですが(笑)、エシカルって何と聞かれることはよくあります。
鈴木 エシカルの方がサステナブルやエコよりも、何となく、大きな考え方を示しているのかなという気がします。
坂口 まさにそう思います。エシカルは、サステナブルやエコなどの“おおもと”となる考え方なので、かなり広い観点が入る分、わかりづらく感じてしまうかもしれません。
鈴木 でも逆に、自由度が高いなという気がしました。「これをしないといけない」ということではなくて、頭の中でいろいろと考えられる自由さがあるなと。

坂口 おっしゃるとおりです!鈴木さんの視点から見ると、身近で「エシカル」な変化を感じることはありますか?
鈴木 まずレジ袋が有料化されたり、エコバッグを持とうというのは、当たり前になってきていますよね。他にも、街中で、サステナブルブランドというか、ブランドの中に取り入れられているエシカルな商品が増えているのかなと感じます。
坂口 エシカルファッションの領域ですね。まさに今、エシカル消費がいろいろな分野でどんどん取り入れられてきていますね。
鈴木 あと、収録現場で紙を使わない場面も増えたなと思います。台本もデータで送られてくることが増えましたし、タブレットで完結できることも多くなっています。
一人ひとりの消費の選択が社会を変えていく力を持つ
鈴木 坂口さんが「エシカルオタク」になったきっかけを教えてもらえますか?
坂口 11年ほど前に、本屋で「エシカル」という言葉に出会ったのがきっかけなんです。雷に打たれるという言葉がありますが、まさにその状態でした。「これを自分のライフワークにしよう」とその瞬間に決めたんです。
鈴木 すごいですね!
坂口 両親が社会福祉事業をやっていたことや、僕自身がアメリカでエンターテインメントにかかわる仕事をやってきた経験など、全部がつながりました。エシカルという概念を知って、ビジネスと社会課題や環境問題の解決とを結びつける方法があることに気づいたのです。
鈴木 もうそれから10年以上なんですね。坂口さんが早くからやってきたことに、今時代が追いついてきているということなのかなとも思いました。今後もそれを引っ張って行かれるでしょうし、僕らもそれについていかなきゃなと思います。
坂口 ちなみに、鈴木さんの同世代の人の感覚はどうですか?エシカルのようなテーマに関心を持っていそうでしょうか?
鈴木 うーん、知らないわけではないのですが、「エシカル」とか「SDGs」という言葉になった時に僕にはあまり関係ないと思う人もいるかもしれません。
坂口 エシカル消費がなぜ重要かというと、消費することが投票することと同じように、意思の表れになるからだと思うのです。一人ひとりの選択が、社会を変えていく力を持っている。選択するときに地球や社会、環境を少し意識することが大事で、意識する人が増えれば選択できるエシカルな商品も増えていきます。僕は「気づきの連鎖」と言っているのですが、このスパイラルをつくっていけるのがエシカル消費だと思っています。

日常のさまざまな場面で出会えるエシカル消費
坂口 僕は衣食住のすべてを対象にエシカルを考えているのですが、鈴木さんの視点で「もっとこういうところでもエシカル度が高まったらいいのに」と思う商品やサービスはありますか?
鈴木 個人的な興味なのですが、実は僕は野球が大好きなんです。野球と環境問題のつながりとか、野球道具に関連するエシカルな商品というのもあり得るのかなと思ったりしていました。

坂口 おもしろいです!野球やサッカーは、観ている人がすごく多いので、そこでエシカルという考え方が広まっていくと、大きな影響力がありますよね。球場での飲食にもエシカル消費を取り入れていけるかもしれません。
鈴木 例えば、野球の道具は、体に合わなくなったり、古くなると、捨てられちゃうことも多いと思うんです。もっとそれについて考えたりできるんじゃないかと。
坂口 ぜひそういうのは一緒に考えてみたいですね。最近、廃棄するグローブを再活用するような事業者も出てきています。
鈴木 お財布にしている物を見たことがあります!僕は野球道具の中でもグローブがすごく好きで、自分でつくることができないだろうかと思ったこともあって。その時に何か僕にできることはないかなと考えたんです。全部環境にいい素材でグローブをつくったらどうだろう、素材もそうだし、染色も環境のことを考えた方法でできないかなと思ったりしていました。
坂口 もしも鈴木さんが何か商品をプロデュースすることがあれば、自分のこだわりに加えて、サーキュラーにすること、つまり「循環」という発想をぜひおすすめしたいですね。原料調達から製造、廃棄、その後リサイクルするところまで、全部循環させる。そして、その商品に関わる人みんなのメリットになるような仕掛けができれば、すごくいいものになるはずです。
自分ができることを、みんなが積み重ねていく
坂口 鈴木さんは、今後こんな選択をしていこうと考えることはありますか?商品やサービスの選択でも、将来の社会に向けて何かを残していくためにということでも。
鈴木 一番大事なのは、無理のない範囲で自分たちのできることを、みんなが積み重ねていくことかなと、最近思っています。
坂口 すごく大事な考え方ですよね。
鈴木 まずはエシカルという考え方を、僕自身も「こうだと思う」と伝えられるようになりたいです。考え方だから自由であっていいし、自分の考えでいいんだよということも伝えられるようにしたいなと。それが先程おっしゃっていた「気づき」を広げることにもつながると思います。自分たちができる範囲で一人ひとりがやっていくことが大事だけれど、最初は知るだけでも十分で、それを伝える役目を僕ができるなら、もっと学んで、発信して、みんなが知ったり気づいたりすることに関わっていきたいです。そして、皆さんと一緒に、楽しんでエシカルを考えていけたらと思います。

坂口 押しつけがましくなるのもまた違いますよね。
鈴木 みんなが自然に行動していること、身近にあることが大事だと思っています。そう思った時に、最初に始められることって何でしょうか?
坂口 皆さんに一つやってほしいと思うのは、商品に思いを馳せることです。この素材はどこから来たんだろう、誰がつくったんだろう、どうやってこの売り場まで届けられたんだろう。そうやって考えることを楽しみながら、買い物する時の選択肢に「エシカルかどうか」を取り入れてもらえたらと思っています。
実は僕のエシカルに関する活動は、選択肢を広げることからでした。エシカルな商品がゼロだと買えないけれど、10個のうち1個でも選択肢があれば、可能性は広がりますよね。売り場にエシカルな商品を並べてもらうことに取り組み続け、少しずつ選択肢が増えてきました。
鈴木 選択肢を広げるっていうことにすごく納得しました。エシカルという考え方をしてみるというのも選択の一つだし、そのためにも「エシカル消費」をもっとたくさんの人に知ってもらえたらいいなと思います。
坂口 僕としては、エシカルやサステナブルという言葉をなくしていくのが目標だと思っています。循環型社会が未来に実現した時には、もうそれが当たり前になるはずですから。
鈴木 これを読んでくださっている方々は何かやろうと思っている人かなと思っています。これまで「エシカル」って何のことか知らなかったけれど、自分もちょっと考えてみようと思ってもらえたら嬉しいです。僕自身も、ぜひ、皆様と一緒に、日々楽しみながら考えて取り組んでいけたらと思います。
