パートナー企業・団体の取組紹介【セブン&アイ・ホールディングス】

お客様がエシカル消費に参加しやすい店づくりの工夫
~陳列棚の手前からエシカル消費をはじめてみませんか~
【セブン&アイ・ホールディングス】

株式会社セブン&アイ・ホールディングス
執行役員
経営推進本部 サステナビリティ推進部 シニアオフィサー
釣流まゆみ様

 

今回は「TOKYOエシカル」パートナーの株式会社セブン&アイ・ホールディングスにエシカル消費に関する取組などを伺いました。コンビニエンスストアやスーパーマーケット、レストランなど多様な顧客接点を持つ会社として、どのように考え取り組んでいるのか。エシカルな取組への熱い思い、具体的な事例を交えお話くださいました。皆さんのそばにあるエシカル、一緒に実践してみませんか?

私たちがなぜグループ全体でエシカル消費の取組を推進するのか

―セブン&アイ・ホールディングスは、コンビニエンスストアやスーパーマーケット、銀行などを束ねている会社ですね

 

はい。セブン-イレブン、イトーヨーカドー、ヨークベニマル等の事業会社を傘下に持っています。私自身も事業会社出身で、2019年から今のポジションに着任しました。

 

―サステナビリティ推進部は、グループ全体の取組に関わっていらっしゃるのでしょうか? 取組の方針なども教えてください

 

そうですね。もともとCSR統括部として8年続いていた部門が、2019年からサステナビリティ推進部となりました。ちょうど、ESG投資やSDGsという考え方がぐっと広まった時期です。グループ全体で推進を強化していくために、部署の位置づけを新たにしたのです。4月に部門が発足し、5月には環境宣言『GREEN CHALLENGE 2050』を表明し、「CO2排出量削減」「プラスチック対策」「食品ロス・食品リサイクル対策」「持続可能な調達」という4つのテーマで実効性のある施策を推進しています。その実行が、着任して最初に取り組んだことです。

 

私たちの事業活動では実は2014年頃から、エシカル消費という言葉を使っています。

SDGsが国連総会で採択されたのが2015年ですので、それよりも前のタイミングですね。エシカルという言葉自体があまり知られていない時期だったと思います。よりよく買い物をしていただくという考え方はその頃からありましたし、レジ袋に関するお声がけも、早くからいくつかの現場で取り組んでいました。

 

―全国規模の店舗展開をされているため、その影響や効果は大きいと思いますが、いかがでしょうか?

 

グループ全体で、全国で2万を超える店舗があります。国内の小売業では最も多くの顧客接点がありますので、それだけでも社会的責任は大きいと感じています。たとえば食品の小売りをしているとどうしても電気を使います。最も電力を使うのは冷蔵庫・冷凍庫なのですが、それが2万店舗分となると環境負荷はものすごく大きいわけです。一方で、安全・安心な食の提供のためには、冷蔵庫・冷凍庫は欠かせません。生じている負荷を少しでも下げることが、社会全体の環境負荷削減に役立ちますので、重点課題として取り組んでいます。

 

―グループ全体で取り組むことのインパクトがありますね

 

私自身が環境負荷を特に意識したのは、東日本大震災の時です。事業会社をあげて電力調整に取り組んだのですが、私たちが使っているエネルギーの大きさと、省エネの取組による変化ということを実感しました。一方で、グループ全体の活動を推進する立場になった時に、私1人でできる規模ではないということも強く思いました。そこでグループ全体から実績や知見のある人たちを集め、『GREEN CHALLENGE 2050』各テーマのプロジェクトリーダーを担ってもらう形で全社的な推進体制をつくっています。

お客様がエシカル消費に参加しやすい店づくりのさまざまな工夫

―エシカル消費に関する具体的な取組を教えてください

 

エシカル消費は、お客様の理解があって進むもので、お客様にどう認知・理解してもらうかが重要となります。そこで全国のセブン-イレブンで「てまえどり」という表示を始めました。すぐに召し上がるなら陳列棚の手前、消費期限の短いものからとっていただくことで、期限切れの廃棄食品が減らせます。もともと店頭の陳列はその考え方で行っていましたが、お客様に伝わる表示をしたことで、ぐっと「てまえどり」の選択が進んだと思います。これは、消費者庁、農林水産省、環境省の3省庁と一緒に取り組み、他のコンビニエンスストア各社もご一緒させていただきました。

 

―日常の買い物の際にエシカル消費を意識・実践できる表示ですね

 

エシカル消費は、いかに消費者1人ひとりがやりたいと思うか、自発的に行うか、かっこいいと思うかが肝だと思っています。押しつけるものではないですからね。参加しやすい環境を店側がどのように工夫してつくるかが大事なのではないかと思って取り組んでいます。

 

―「エシカルプロジェクト」という取組もされていますが、どういう活動ですか?

 

全国のセブン-イレブンで行っている取組で、おにぎりやパンなどの対象商品の中で、販売期限が近づいたものを電子マネー「nanaco」で購入していただくと「nanaco」ボーナスポイントを付与するものです。対象の商品にプロジェクト名と付与ポイントを表示したシールを貼り、すぐ食べるなら手前から商品を取っていただくことでいつもの商品が「環境に配慮した選択ができる」商品になるという意義も伝えています。できるだけ選択していただくことで食品ロスを減らしたいと、2020年5月から始めました。

グループのイトーヨーカドーなどのスーパーマーケットでは、消費期限が近いものに値引きシールを貼り、お客様に選択してもらうことで食品ロス削減を目指しています。

 

―各事業会社での取組と、グループ共通の取組があるのでしょうか?

 

グループとして共通目標を掲げつつ、業態に合わせた取組を事業会社ごとに工夫しています。たとえばセブン-イレブンでは、製法などを工夫して、消費期限自体を伸ばした商品も販売し始めました。一方、ファミリーレストランのデニーズでは、食べ切りやすい「少なめライス」をメニューにしたり、希望者には、環境に配慮された専用容器を提供して、食べきれなかった料理を持ち帰ることができるようにしています。環境省が推奨する食品ロス削減活動「mottECO(モッテコ)」の導入モデル事業にもなっています。

取組を通じて感じるエシカルを巡る意識や社会の変化

―お客様の反応はいかがですか?

基本的にはお客様にとってプラスになることを意識していますので、エシカルプロジェクトも他の取組も、徐々に認知、活用されていると思います。

―他にもエシカル消費に関して取り組まれていることはありますか?

家庭で食べきれなくて捨ててしまう食品もずいぶんあると聞いています。食べきれる分だけ買えるように、小分けサイズの商品も増やしています。また、環境に配慮した容器・包装の活用も重点課題の1つにあげているため、最近はトレーの一部にペットボトルリサイクル由来のPET素材を使ったり、植物性由来のバイオプラスチック容器を使い始めています。最小の資源で最大の満足が得られるような工夫を今後も重ねていきたいと思っています。

―オリジナル商品開発における工夫もされているそうですが、どのような内容でしょうか?

そうですね。たとえば収穫されても形状が販売基準には満たないために市場に出ないで廃棄されてしまう野菜があります。そこで、こうした果物や野菜を、バナナジュースとして活用したり、ニンジンをドレッシングにするなど新たな商品として開発する形での活用を始めています。ただし私たちは小売業なので、商品開発はメーカーさんの協力が必要です。近年はエシカル消費への意識を高めるお取引先様も増えてきていますので、今後も連携しながらいろいろと進められるようにしていきたいと考えております。

―他にエシカルな取組を通じて何か変化を感じることはありますか?

従業員の方たちにとってのモチベーションにもなっていると感じます。たとえばエシカルプロジェクトのためにシール貼りの作業が生じた時に、仕事としては1つ面倒が増えると思うんですね。ただ、それがわりとポジティブに受け止められていると感じます。この作業をすることが廃棄物削減につながる、自分たちの取組が環境や社会につながっているという意識は高まっていると思います。

エシカルな取組を進める先に目指しているもの

―今後、TOKYOエシカルのパートナーとして、東京都や他の企業・団体と一緒に活動いただくこととなりましたが、最初にこの取組を知った時にどのように感じましたか?

 

大事な取組を始めてくれたと思いました。やはりエシカル消費は、広く大勢が動かないと進みません。東京都や当社も含め多くの企業・団体が発信をすることで見聞きする機会が増えて、変化が進むことを期待しています。レジ袋がいい例です。法制化もされたことで、翌日から180度行動が変わったことを実感しました。

 

―この先の展望を教えてください

 

お客様に向けては、今の取組をベースにどんどん進めていく予定です。一方で、食品ロスの削減については、当社の仕入先、その先の生産者など、サプライチェーン全体で行う必要があると思っています。たとえば、商習慣の一つに3分の1ルールというものがあります。これはお店に納品される時点で、賞味期限が3分の2以上残っていないと、店舗に納品できないという商習慣です。これにより納品できなかった食品は廃棄につながってしまいます。そこで、これまでの3分の1から、2分の1に緩和することで、納品されずに廃棄される食品を減らす取組みを拡大し、サプライチェーン全体での取組も推進しています。

 

―社会的な連携も重要ですね

 

世界情勢を見ていても、食料の循環は本当に重要なことだと思います。食べ物が手に入らないような地域もあります。その傍らで食料が廃棄されてしまうという事態は減らしていくべきです。店頭での取組、お客様の理解と選択、そして生産・流通全体でもルールを更新しながら、食料の廃棄をどのようになくしていけるか、社会全体で取り組んでいけたらと思っています。

 

―最後に、TOKYOエシカルのウェブサイトを見ている消費者の方へのメッセージをお願いします

 

私たちセブン&アイグループのエシカル消費に向けた取組は、お客様のご協力なくしては進みません。また、さまざまな連携をすることで、より大きな達成につながると感じています。東京都、今回プロジェクトへご参加の企業・団体、消費者の皆様とともに取組をすすめてまいります。

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