「完璧でなくても、身近なところから――。大学生が実感したエシカル消費との向き合い方」

「エシカル消費」と聞いて、どんなイメージが浮かびますか?
環境や人にやさしい取組として広まりつつありますが、「難しそう」と感じることもあるのではないでしょうか。

今回の企画では、都内 で暮らす大学生が、実際にエシカル消費を体験する様子を取材。
フェアトレードや地産地消などのエシカルな商品を「見て・買って・食べてみる」ことで、どんな発見や気づきが生まれるのかを探りました。

体験してくれたのは、国際基督教大学2年生で、同大学のフェアトレードサークル「ICU ELABEL」に所属する河西 凛(かさい りん)さん。
高校時代から環境問題に関心を寄せていた彼女が、実際に商品を手に取りながら考えたこと、感じたことをお伝えします。

ICU ELABELが目指す、フェアトレードの「堅苦しくない」アプローチ

「ICU ELABEL」はフェアトレードのトートバッグやハンカチタオルの制作・販売を行っているサークルです。多くの人に、自然な形でフェアトレードに関心を持ってもらうことを大切にしつつ、「できるときにできる人がやる」というアットホームな雰囲気で活動しています。

大学へ入学したとき「環境問題をどう伝えるか」ということに興味を持っていた河西さん。
「ICU ELABEL」の活動内容を知ったとき、「どのようにグッズを売れば良いか勉強できるのではないか」と思い、サークル活動をはじめたといいます。

サークルの特徴は、グッズの販売方法。
学内イベントなどでブースを出す際、元気なメンバーが前を通りがかる学生に「かわいいですよ」「ハンカチどうですか?」と明るく声をかけるといいます。
「それで興味を持って足を止めてくれる人が多いんです」と話す河西さん。

まず、お客さんに販売しているグッズを見せ、興味を持ってもらってから「実はフェアトレードで作られたんです」と説明することが一つのスタイルだといいます。

「フェアトレードは堅苦しいものではなく、もっと楽しいものとして捉えていただきたいんです。『気づいたらその商品がフェアトレードで作られていた』という糸口でもいいと思います」と独自のスタイルにある背景を語っていました。

キャンパス周辺で見つけた、地域や生産者とのつながり

次に、大学周辺にある野菜の直売所を訪問。
河西さんは「こんな近くにあったんですね。実は、初めて知りました」と新たな発見があったことを教えてくれました。

「実家では近所のおじいちゃん・おばあちゃんから野菜をもらっていたので、どの畑で、誰が作ったのかよく分かっていたんです」と振り返る河西さん。しかし、東京では「野菜や生産者と自分の間に何か距離感があるのでは…」と感じていたといいます。

直売所で土がついたじゃがいもを見ながら、「スーパーではきれいな状態でパッキングされたものしか見ていなかったので、(直売所の野菜は)距離が近く感じます」と話していました。

河西さんにとって特に魅力的だったのは、一人暮らしに適した量と価格。「最近、野菜の値段が高くて食べることが少ないんです。でも、ナスの2本入りが100円なら一人暮らしでも使い切れますよね」と嬉しそうな表情を浮かべていました。

「この場所はアルバイトに行くときの通り道なので、そこで買えるのはすごく便利です。地域の方たちが作ったものを買うことで距離が縮まるのを感じられるし、『自分がこの地域でちゃんと生きているんだ』という、つながりが生まれる気がします」と、話してくれました。

プレゼントから始まったフェアトレードとの付き合い方

その後、武蔵野市内のお店でフェアトレードのチョコレートを購入・試食した後、河西さんに価格への印象や商品を買う理由などを率直に伺いました。

「値段は少し高めだと思います。アルバイトに行くのは週1〜2回程度なので、もらえるのも月数万円なんです。例えば、フェアトレードの服を1着買ったら、1カ月分のお給料が消えちゃいますね…」と心境を語る河西さん。学生にとってフェアトレード商品の価格は「高め」という課題があることも分かります。

それでも河西さんがフェアトレードとの関わりを続けているのは、サークルでの販売活動だけではなく、贈り物を選ぶという特別なときには、自分自身でもフェアトレード商品を選びたいと思っているからです。

「友達の誕生日プレゼントに、フェアトレードのチョコレートをあげたことがあるんです。背景のある商品をプレゼントすると受け取る側もうれしいと思って…」
その友人も「凛ちゃんらしいね」と言って、喜んでいたそう。

そして、サークル活動を始めたこともきかっけとなり、お店でフェアトレード商品を探すことが増えたり、生産背景などのストーリーがわかる商品を買いたいと思うようになったといいます。

無意識の行動を見直すきっかけになった一日

その後、1日を振り返って気づいたことや、今後も続けていきたいエシカルアクションなどを聞きました。

「一番印象に残ったのは野菜の直売所ですね、一人暮らしで使える量で買いやすかったので、今後も利用したいと思いました」と振り返る河西さん。アルバイトの通り道にあるという立地の良さも、継続利用への意欲につながっていました。

また、河西さんは、普段から食品ロスを意識した買い物をしているとのこと。
「基本的に食材を冷凍保存しているので、いつも商品を手前から取るようにしています。そうすることで、ちょっとでも“ロス”が減ったらいいなという気持ちもあります」

河西さんにとって、今回の一日は「身近なところから始められる」ことを改めて実感する体験になったようです。

「まずは選択肢の一つとして知ってもらえたら」

最後に、河西さんに読者の方へ向けて伝えたいメッセージをいただきました。

「まずは、『フェアトレード商品を選ぶ』ことを知ったり、買い物する際の選択肢として考えてもらえるだけでも嬉しいです。いまは大手スーパーでもフェアトレードのチョコレートが売っていて、100円高い程度の差で買えることもあります。気分がいい日に買ってみるとか、1年に1回買うとかでもいいので、手に取ってくれる人が増えたらいいですね。」

身近なところから、無理のない範囲で――。河西さんの等身大のアプローチは、多くの方にとって実践しやすいヒントを与えてくれました。

・・・
エシカル消費に関する専門用語を解説しています。
「エシカル用語辞典」はこちら

記事一覧へ