
TOKYOエシカルアドバイザー坂口真生さん・末吉里花さんが語る ー エシカルな文化を築く歩み
TOKYOエシカルアドバイザーの坂口真生さんと末吉里花さんによる対談企画。
お二人からエシカル消費を広める中での実践や経験を振り返りながら、エシカルな文化を築いてく未来を語り合っていただきました。
本記事では、その内容をご紹介します。
偶然の出会いから、エシカルをライフワークに

坂口真生さん
――お二人が「エシカル消費」というテーマに出会ったきっかけと原体験を教えてください。
坂口: 前職のアパレル企業で、ファッションの展示会に携わっていたことがきっかけです。展示会のリサーチがてら本屋さんへ立ち寄ったときに、エシカルに関する書籍に偶然出会い、そこで初めて「エシカル」という概念を知りました。
その書籍には「エシカルはソーシャルビジネスの一つ」と書かれていたんです。
ファッション業界で培ったビジネスやマーケティング戦略を活かしつつ、社会貢献や環境改善にも貢献できる「ソーシャルビジネス」や「エシカル」という考え方に触れたとき、「なるほど」と思ったと同時に「そういった仕事もあるんだ」と驚いたんです。
その書籍との出会いで「エシカルをライフワークにしよう」と、その瞬間決めました。

末吉里花さん
末吉:2004年に番組ロケで行ったキリマンジャロの頂上で、温暖化の影響で雪解けした氷河を目の当たりにしました。その氷河の一部を生活用水として使う子どもたちとの出会いによって、立場の弱い人たちや環境のために問題解決したいと決心したんです。
それから、自分でできることをしてみましたが、環境問題の幅が広すぎて…。「自分一人でやっても意味があるのだろうか」と悩んだ時期もありました。
その時に、とあるフェアトレードブランドの白い素敵なワンピースとの出会いがあり、「素敵なモノを通じて環境や生産者、地域にも配慮できる」ということを知り、フェアトレードの魅力を日本の皆さんに伝えたいと思うようになりました。
ただ、フェアトレードは途上国の産品が中心で、対象となる商品が限られているので、そこで、より間口が広く、誰もが関わることのできるエシカル消費に可能性を感じ自然と普及に気持ちが向きました。
エシカル消費をブームから「文化」として定着させるには
――これまでさまざまな活動をされた中で、エシカル消費を単なるブームではなく、「文化」として定着させるために意識されたことはありますか。
坂口:私はブームも文化も作りたいと思っているんです。ブームになることで問題点や次の行動へ向けた課題も議論されると思うので、その流れは歓迎しています。
ただ、最終的には「文化」として根付かせたり、価値観として定着させることをずっと大切にしてきました。
末吉:坂口さんたちがビジネスを通じてエシカル消費の普及を進めてくださっていることは、とても大事だと感じます。社会の価値観を変えていかない限り、大きな変化は起こらないですからね。
一つ伺いたいんですが、ここ最近、企業の反応がこれまでと変化したり、「一緒にエシカル消費を広めたい」というポジティブな姿勢を感じたりすることはありますか?
坂口:消費者庁の研究会やSDGsの普及がきっかけで、日本企業や経済界でもエシカルに対する意識が変わり、大企業ではエシカルを軸にした事業やプロジェクトもはじまったと感じています。

末吉:企業はCSR的な活動ではなく、本業を通じてどう向き合うかを考え始めた感じですか?
坂口:そうですね。でも、まだ課題もたくさんあるんですよね。
末吉:最近、エシカル消費を文化として定着させるためには、教育が大事だと感じるようになったんです。そのために私たちは、学校の先生と子どもたちの伴走型のサステナブルな探究型授業をはじめています。
坂口:生涯教育の取組は、社会全体の意識変容において重要な課題ですね。私はビジネス側にいるので、社会起業家を憧れの職業にしていきたいです。仕事としての選択肢を作るには、まず自分がロールモデルになるのが大切だと思います。そして、制度設計から教育・ビジネス同士の連携も重要ですね。
末吉:私たちが教育を通じてエシカルなものさしを育んでいっても、実践の場面で、エシカルという選択肢がないと意味がありません。それを作っているのが、坂口さんの活動だと思います。
「日本らしさ」からつくるエシカルな社会

――今後国内外でエシカル消費を広めていくうえで、お二人がやってみたいこと・挑戦したいことがあれば教えてください。
坂口:今後の日本で重要なのは、サステナブルツーリズム(=エシカルツーリズム)だと考えています。地方の魅力やポテンシャルを大切にしたいと思っていて、その価値を高めて地域ごとのエシカルを成熟させつつ、若い世代が行動しやすい環境を整えるための企画、サービス、プロモーション作りをしたいと思っています。
末吉:日本らしさ、地域らしさは大切ですよね。
坂口:海外の方が具体的で分かりやすく、おしゃれな事例もあるんですが、やはり日本での取組を「最高にかっこいい」という位置づけにしたいですね。そうなることで興味を持つ方も増えると思います。
末吉:エシカル消費をもっと身近に感じてもらうために期待していることが、シェアリングやリユースを通じて物を長期的に回す循環経済の仕組みです。この循環の中にエシカル消費を位置づけることで、その広がり方にも変化が生まれると思います。「価格が高いから購入をためらう」という現状を打破するきっかけにもなり得るのではないでしょうか。

坂口:制度設計を変えていくことをやっていきたいんですね。
末吉:そうですね。企業活動ではあらゆるステークホルダーや他社との「共創」を通じて環境に配慮した取り組みを進めることで、循環型の仕組みや地域の取り組みも育まれていくと思います。そうした取り組みの様子が地域の中で目に見える形となると、住民のモチベーション向上にもつながるはずです。
エシカルな社会の実現には「つながり」が重要です。そのつながりを生み出す場として、TOKYOエシカルの存在は意義深く、価値あるものだと感じています。
坂口:エシカルな暮らしを送るには、自分が住んでいる街にどれだけ愛情を持てるかが鍵です。物を選択することはVOTE(投票)と同じであり、何を選ぶかによって社会を変えることもできます。一人ひとりがエシカルについて考えられるようになれば、世の中の方向性も変わっていくかもしれませんね。
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エシカル消費に関する専門用語を解説しています。
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