
共創からエシカル消費の未来を切り拓く|TOKYOエシカルカンファレンス実施レポート
2025年6月17日(火)に、東京都庁にて「TOKYOエシカルカンファレンス」が開催されました。
TOKYOエシカルでは、パートナー企業・団体間の連携を強化し、エシカル消費のさらなる展開を目的としてカンファレンスを開催しています。
今回は、一般社団法人日本エシカル推進協議会会長を務める生駒芳子氏による講演や、「パートナー企業・団体間の取組連携」をテーマにしたパネルディスカッションが行われました。本記事では、当日の様子をレポートします。
パートナー同士の連携促進へ向けて

古屋留美 東京都生活文化局長
本会は、古屋留美生活文化局長による挨拶から始まりました。
TOKYOエシカルは立ち上げから4年が経過し、現在では270を超えるパートナー企業・団体とともにさまざまな事業を推進しています。
古屋局長は「エシカル消費は、都民の皆様から一番身近で、一番取組しやすいSDGs」と述べ、TOKYOエシカルは、都民へ前向きな消費行動を広める活動であることを伝えました。
また、TOKYOエシカルをきっかけにパートナー企業・団体同士の連携が活発化していることを振り返り、こうした相互連携がエシカル消費のさらなる拡大に寄与していることを強調しました。

次に、東京都生活文化局消費生活部から、令和7年度のTOKYOエシカルの主な取組を紹介。10月から11月にかけて実施予定のTOKYOエシカルキャンペーンなどの概要を説明しました。
そして、本年度より開始された助成事業の紹介では、「複数のTOKYOエシカルのパートナーが連携して実施する、エシカル消費に係る普及啓発の取組を助成いたします」と述べ、パートナー同士で実施するワークショップや、商品開発における広報などの一部経費を支援する制度も紹介されました。
エシカル経営が切り拓く企業価値向上への道筋

一般社団法人日本エシカル推進協議会会長 生駒芳子氏
前半のメインパートでは、一般社団法人日本エシカル推進協議会会長の生駒芳子氏による講演が行われました。
生駒氏は、「これからのビジネスには不可欠な視点」として、エシカル消費とエシカル経営の重要性について言及。日本でのエシカル消費の市場規模は約8兆円まで伸びている反面、エシカル消費が普及しているイギリスと比較すると3分の1程度にとどまっていることを紹介しました。
続けて、国内でエシカル消費を広げ、各企業がエシカルなビジネスを目指すためのポイントとして、同協議会が2年間かけて策定した「JEIエシカル基準」※を紹介。
同基準は「自然環境を守っている」「消費者を尊重している」などの8つの項目から構成されおり、日本初となるエシカル消費の総合的な基準として、企業が経営方針や事業活動に対してエシカルな状態かどうか自己判断できることが特徴です。
(※出典:「エシカルバイブル」日本エシカル推進協議会編著/生産性出版)
生駒氏は、エシカル経営が重要視される背景として、ESG投資の観点にも言及。「財務情報だけで測られた企業の価値が、今いかに社会的責任を果たしているか、環境問題に対策をとっているかが判断基準になる」と述べ、エシカル経営が企業価値向上に直結することを語りました。
実践者が語る連携成功の秘訣

後半は、TOKYOエシカルアドバイザーの坂口真生氏をファシリテーターとして迎え、TOKYOエシカルのパートナー企業・団体による連携事例の紹介・パネルディスカッションが行われました。
会場ではライブアンケートシステムを導入し、参加者の声をリアルタイムで収集する演出が行われました。
はじめにアイスブレイクとして、「他のパートナー企業・団体と連携事業を実施してみたいか?」という質問が投げかけられました。
「連携したい」という回答が8割を超えて多くの参加者が連携への強い関心を示した一方、連携への実現に向けた課題を感じている参加者がいることが明らかになりました。
この結果を受けて、パネリストからは連携実現のポイントについて活発な議論が展開されていきます。
事例1.タキヒヨー株式会社×上智大学

(写真左から)タキヒヨー株式会社 森康智氏・國澤あや乃氏、上智大学 藤野圭氏
両者が共同で製作した「上智大学公式サステナブルTシャツ」を着て登壇しました。
一つ目の事例として、繊維商社のタキヒヨー株式会社と上智大学による「上智大学公式サステナブルTシャツ」の共同開発プロジェクトの事例が紹介されました。
これはタキヒヨーが服の生産時に発生した生地の裁断片を用いて、再び服の生地を作る「NO WASTE PROJECT」から産出された素材を用いてTシャツを作る取組で、学生のデザインや意見も取り入れて制作されました。
両者の出会いは、2024年9月に開催されたTOKYOエシカルのワークショップ。タキヒヨーの國澤氏と上智大学の藤野氏が同じグループになったことがきっかけといいます。
藤野氏が「サステナブルTシャツを作りたい」と話したところ、國澤氏が同社の取組資料を示し、意気投合したことから連携が始まりました。
理念の一致から生まれた共創プロジェクト
冒頭のプレゼンテーションでは、タキヒヨーの國澤あや乃氏が、連携成功の要因として「お互いに掲げた目標と理念が一致したこと」を挙げました。
「サステナブルな選択肢を広げる先駆けとして、小ロット対応可能なプロジェクトを推進したい」というタキヒヨーの想いと、「地球規模の課題に対して、自分事として考える機会を提供したい」という上智大学の想いが一致したことで、プロジェクトが始まったといいます。
質疑応答では「エシカルな取組を推進するとき、経営層へどのように説明するか」という質問が寄せられました。
タキヒヨーの森康智氏は「すでに欧米のラグジュアリーブランドとの取引では、サステナブルでないと商売が成立しない時代が来ている。長期的な視点で優位なポジションを取ることにつなげられることも伝えるのが大事」と、具体的なビジネス価値を示すことの必要性を強調。
また、ライブアンケート にあった「継続的なコラボレーションを実現するには?」という質問に対し、上智大学の藤野圭氏は「漠然とした提案ではなく、『サステナブルTシャツを作りたい』など明確に目的を伝えることが大切」と回答。連携を進めるためのポイントが多く提示された時間となりました。
事例2.特定非営利活動法人NPOビューファ×株式会社ロフト

(写真左から)特定非営利活動法人NPOビューファ 富田晶子氏、株式会社ロフト 片山志乃氏
2つ目の事例では、化粧品の適切な廃棄方法を啓発する特定非営利活動法人NPOビューファと、雑貨専門店を展開する株式会社ロフトとの連携事例が紹介されました。
この事例では、2025年1月に、ロフトがサステナブルな暮らしの提案や商品を紹介する「LOFT GREEN PROJECTサステナブルビューティー&ライフ」のPR展示会にて 、ビューファは「化粧品の正しい捨て方」をテーマにしたパネル・ワークショップを出展しました。
名刺交換から始まった化粧品廃棄啓発プロジェクト
冒頭で、ビューファの富田晶子氏は、「2024年6月のTOKYOエシカルカンファレンスの交流会で、思い切ってロフト様に名刺交換をお願いした」と、連携のきっかけを振り返りました。その2ヶ月後の対面打ち合わせを経て、ロフトのPR展示会への出展が実現。
富田氏は「小さなNPO団体として活動の幅を広げていくことの限界を感じていたが、ロフト様のお力添えにより、より多くの企業や生活者の方に活動を知ってもらう貴重な機会となった」と振り返りました。
質疑応答では、「エシカルな取組を行う際に初期コストがハードルになる」という課題が挙がり、富田氏は「具体的な活動内容やコンセプトがわかる資料作成に焦点を置いた」と実践的なポイントを紹介。
また、ロフトの片山志乃氏も、「コラボレーションでの社内審査は、あくまで企画の目的や内容が重要」と、門戸を広げた姿勢を示しました。
「連携するときの目標設定をどうしたか」というライブアンケートのコメント に対し、富田氏は「より多くの方に私たちの活動を広めたいという大きな目標があり、結果としてインフルエンサーによるSNSでの発信にもつながった」と回答。連携による手応えを実感できたエピソードを共有しました。
ファシリテーターの坂口氏による総評

TOKYOエシカルアドバイザー 坂口真生氏
ファシリテーターを務めた坂口氏は、連携成功の共通要因として、「具体的に『何をするか』『いつするか』が明確になっていたことが重要で、お互いのニーズが一致する出会いの機会を得ることも成功のポイントになる」と言及。
最後に、「紹介された事例が今後どのように展開するかが楽しみです。生駒さんからご紹介いただいたエシカル基準や東京都の助成金なども活用して いただきたい」と締めくくりました。
新たな連携に向けて広がるエシカルの輪

カンファレンスの最後には、会場を移動してパートナー企業・団体同士の交流会が開かれました。各社の取組を紹介する資料が設置され、参加者同士が積極的に情報交換を行う様子が見られました。
参加者からは「パネルディスカッションで共創の面白さや可能性を感じた」「異業種の方とも対話を重ねることで、一緒にできる取組があることがわかった」いう感想が寄せられ、TOKYOエシカルでの出会いきっかけに、新たな連携が生まれ、エシカル消費の輪がさらに広まっていく期待が膨らむ1日となりました。
令和7年度 TOKYOエシカルカンファレンス<第1回>の様子を動画でご視聴いただけます。