ゴミ問題を学んでアップサイクルを実践! 三栄コーポレーションで行われたTOKYOエシカル体験ツアーをレポート
TOKYOエシカルが主催する、小・中学生とその保護者を対象にした「TOKYOエシカル体験ツアー」。2024年1月27日(土)に開催された今回は、アップサイクルをテーマに、生活用品の専門商社 三栄コーポレーション とリサイクルコットンの生地を使ったオリジナルエコバッグを作るワークショップを開催。ものづくりを楽しみながら、エシカル消費やゴミ問題について学びました。
日常にある「もったいない」からゴミ問題を学ぼう!
来場とともに テーブルに着席する参加者たち。まずは、テーブルごとに「最近もったいないと思ったこと」を発表しながら、自己紹介を行いました。それぞれがじっくり考えながら、「学校で水を出しっぱなしにしている子がいてもったいないと思った」「給食を残したくないから、食べられる量だけよそわないともったいない」など、日常を思い返して発見した「もったいないこと」を具体的に挙げてくれました。
「最近もったいないと思ったこと」を発表する子どもたち
続いては東京都職員の福田さんが、「エシカル消費」について参加者に説明。地球温暖化による気候変動、海洋プラスチックゴミが生物に与える悪影響、多くなった海洋ゴミが外国の海辺を汚すこともあるなど、日本だけでなく世界中で起きている環境問題について解説しました。
また、プラスチックゴミを減らすための行動として正しいものを選ぶクイズをとおして、「マイバッグを使い、レジ袋をもらわない」「つめ替え用ボトルなど繰り返し使えるものを選ぶ」といった、すぐに実践できるエシカルな行動についても学びました。
エシカル消費の基礎知識を学んだあとは、さらに一歩踏み込んで、社会問題のなかでも身近な「ゴミ問題」についてのレクチャーに移ります。三栄コーポレーション服飾雑貨事業部の露木さんが、自社の取組も交えて、ゴミ問題について教えてくれました。
ゴミ問題を解説する露木さん
有害物質を含むゴミが放置されることによって自然環境や生活環境が汚染されてしまうこと。ゴミが適切に処理されないと、悪臭・感染症・食中毒・ぜんそく・アレルギーなどの原因になり、人々の健康への悪影響になる可能性があること。また、日本の埋立地の寿命はあと21.4年と言われており、ゴミの量に対して埋立地不足になってしまうということ……。ゴミ問題の深刻な現状に、参加者も聞き入ります。特に、「日本の家庭で出るゴミは年間で東京ドーム112杯分。年々減ってきてはいるけれど、すごい量ですよね。さらに、工場や企業から出るゴミは東京ドーム1,118杯分。会社も個人もゴミを削減するために努力することが大事です」という露木さんの言葉に、「ゴミってそんなに多いの?」と驚きの声も上がりました。
埋立地がパンクしてしまいそうなほどの膨大なゴミに溢れる状況のなか、三栄コーポレーションは、ゴミになるはずだったものをリサイクルして新しい商品に生まれ変わらせているブランドのアイテムを積極的に取り扱っています。例えば、鮮やかな黄色が印象的なバック「AIRPAQ」は、車の廃材から生まれたもので、本体の生地がエアバッグ、バックルにはシートベルトが使われている、ユニークかつエシカルな商品です。
AIRPAQのバックパックと、原材料のエアバッグ
また、この日、三栄コーポレーションのスタッフたちが着用していたスウェットも、リサイクル素材からできたものです。洋服を作る際に工場で発生してしまう生地の裁断ゴミを糸に生まれ変わらせた「Pure Waste」という素材が使われています。
Pure Wasteを使って作られたスウェット
Pure Wastes製のエコバッグ
リサイクル素材を使ったエコバッグ作りを体験
さまざまなエシカル商品について学んだあとは、Pure Waste製のエコバッグに絵を描いて、オリジナルエコバッグを作るワークショップがスタート。絵付けに使うのは、「べじからふる絵の具」と呼ばれる廃棄野菜から作られた染料です。収穫された野菜のうち、決められた大きさや形、色から外れてしまった規格外野菜は、市場に出回らず廃棄されてしまうことがあります。そんな規格外野菜を乾燥させてパウダー状にし、木の樹脂を混ぜたものが、この「べじからふる絵の具」です。
べじからふる絵の具
べじからふる絵の具を使って絵を描くこどもたち
重ね塗りをしたり、絵の具を混ぜて自分だけの色をつくったりしながら、思い思いに絵を描いていく参加者たち。木のイラストや電車のイラスト、カラフルなドット柄など、世界にひとつだけのエコバッグを作り上げていました。
絵を描き終わったあとは、使用した絵の具がどんな野菜からつくられているかを当てるクイズを実施。紫はさつまいも、黄色はかぼちゃ、緑はほうれんそうなど、普段口にしている野菜が鮮やかな色の絵の具になることに驚く参加者たち。保護者の方たちも絵の具の匂いをかぎながら「ほうれんそうの匂いがする!」など新鮮な体験ができた様子でした。
クイズに参加する子どもたち
ワークショップ終了後には、「明日からゴミを減らすためにできること」をみんなで考えました。各テーブルで話し合いながら、「リサイクルできるものは捨てずにリサイクルする」「ゴミをちゃんと分別して出す」「水をあまり使わないように気をつける。出しっぱなしにしない」など、自分たちの生活を見直す意見が挙がりました。
最後に、三栄コーポレーションから参加者に向け、おもちゃを再利用してつくられた「YOT WATCH」がプレゼントされました。年間約6万トンも捨てられてしまうおもちゃのプラスチックを固め直してつくられた腕時計です。さっそく開封して手に取り、「これがおもちゃだったの?」「みんな何色の時計だった?」など、参加者たちも大興奮で喜んでいる様子でした。
YOT WATCHを着けるこどもたち
エシカル消費を五感で学び、考えた1日
ツアー終了後、参加した小学2年生の男の子は「ゴミをいっぱい捨てないように気をつけようと思いました。エコバッグには弟が好きな電車を描いたので、プレゼントしようと思います」と楽しそうに感想を語ってくれました。小学4年生の男の子は、「野菜で絵の具をつくれることも、ゴミが海流に乗って外国の海辺に流れてしまうことも初めて知りました。海でプラスチックのゴミを食べたり、絡まったりしてしまっているウミガメの気持ちになって、ゴミについて考えてみようと思いました」と、エシカル消費や環境問題について関心が高まったようです。
保護者からも、「ゴミをリサイクルした服や車の廃材を使ったバッグ、野菜からできた絵の具があること自体知りませんでした。商品から環境問題を知る、いいきっかけになりました。子どもが低学年なので、まだ環境問題について教えるのは早いかなと思っていたのですが、これから家族でも話していけたらと思っています」「子どもたちもSDGsという言葉は知っているけれど、今日のようにリサイクル素材のエコバッグや野菜からできた絵の具などに実際に触れて、体感したことによって、よりゴミ問題やエシカル消費を身近に感じ、問題意識を持てるのではないかと思いました」という感想が寄せられました。
三栄コーポレーションのスタッフたちも、「会社でのワークショップは初めての取組で、とても新鮮だった」と振り返ります。講師を務めた露木さんは、ゴミ問題について子どもたちにどうやったらわかりやすく伝わるか熟考してレクチャーに臨んだとのこと。「ゴミ問題の話は少し難しいかな、と思ったけれど、みんな真剣に聞いてくれました。べじからふる絵の具のような五感で面白さを感じることができる商品は、エシカル消費に親しんでもらうためにはうってつけですね」と、参加者たちの環境問題への関心の高まりにとても嬉しそうな表情を浮かべていました。
司会を務めた寺内さんも、「YOT WATCHを開封した時の子どもたちの表情や、べじからふる絵の具に興味を持ってくださった保護者の方がとても印象的でした。どちらも個性的なエシカル商品なので知っていただけて良かったです。普段の業務では、消費者の方とコミュニケーションを取る機会があまりないので、商品を手に取って喜んでくださる姿を見て、とてもやりがいを感じました」とエシカル商品の求心力の高さと参加者たちの反応に喜びを感じた様子。
また、企画開発担当マネージャーの山田さんも「YOT WATCHを渡した時の反応が嬉しかったです」と語り、「商品の背景やリサイクルの流れを説明した時に、お子さんたちがすっと受け入れて理解してくれたことが印象的でした。子ども向けだからと簡単に教えるのではなく、しっかりメッセージを伝えていいんだと実感しました。モノだけではなく、コミュニケーションにも思いやりやストーリーがある。それがエシカルの本質だと思っています。その本質を伝えられるような取組をしていきたいですし、大人の好奇心をくすぐるようなワークショップも取り組んでいきたいです」と、今後の展望を語ってくれました。
左から、露木さん、寺内さん、山田さん
自分の手でリサイクル素材を触り、体感したからこそ、その背景の環境問題にも関心が高まった今回の「TOKYOエシカル体験ツアー」。子どもたちも、保護者も、楽しみながらエシカル消費についての考えが深まった1日になりました。TOKYOエシカルでは、エシカルな商品の背景にあるストーリーをとおしてさまざまな社会課題について考えるきっかけを今後も創出していきます。