エシカル消費を未来に繋げていくための体験とは? テーマは子ども向けの体験。TOKYOエシカルミーティング Vol.2をレポート

エシカル消費を日常とするための社会的ムーブメントを創出するプロジェクト「TOKYOエシカル」は、パートナー企業・団体とともに、カンファレンスやエシカルマルシェ、子ども向けの体験企画など、さまざまな取組を行っています。

2023年11月22日(水)には、パートナー企業・団体同士のより密な交流を図り、エシカル消費に関する意見を交換する「TOKYOエシカルミーティング Vol.2」が開催されました。

今回は22組のパートナー企業・団体から35人が参加し「子ども・若者向けのエシカル体験の創出」をテーマにグループワークを実施。業界の垣根を越えて取組を進め、エシカル消費を普及させるためのアイデア交換が行われました。活発な議論が行われた当日の模様をお伝えします。

「もったいない」という言葉が第一歩

会の冒頭は、東京都生活文化スポーツ局 消費生活部 消費者情報総括担当課長の岩下大志氏による開会の挨拶に続き、「子どもアドバイザー」として保育の現場経験と子どもの発達学を基にした子どもに関わる活動を行っている河西景翔氏によるプレゼンテーションが行われました。

子育てを社会全体でフォローしていく仕組みを目指して、子育て機関との連携やメディア発信などの活動に取り組む河西氏。活動の一環として、廃材を使った楽器作り等の工作ワークショップや、形が変形していたり傷んでしまった野菜やフルーツを使った染色体験といった子ども向けの体験イベントを行っていることについて、学生時代に学んだ都市環境学がその背景にあると語ります。

「都市を地球環境の一部と考える都市環境学では、『無駄のない社会づくり』が目指されます。私が実施してきた子ども向けの体験イベントでは、大人にとっての不必要が子どもにとっての必要であるという気づきを得つつ、その創作活動により子どものクリエイティブな力を伸ばしながら、子どもだけではなく保護者も楽しみ、エシカルへの理解を深めてもらうようにすることを意識しました。廃材に触れてもらうなかで引き出す『もったいない』という言葉がエシカル消費を理解する第一歩なのです」

また、実際にイベントを行う際のポイントについては「保護者を含め親子で理解を深めるためには、人数を限定し、対象年齢に合った内容で開催したうえで、後日しっかりとフィードバックを受け取る」ことが重要であると参加者たちに伝えました。

22の企業・団体が5つのチームに分かれ企画を考案

河西氏の今回のプレゼンテーションを経て、グループワークに移ります。自治体やメーカー、鉄道や建設業、環境課題に取り組む一般社団法人など合計22組のパートナー企業・団体が5つのチームに分かれ「子どもや若者に向けたエシカル体験」の企画案を検討していきます。

グループワークの前半では、参加者たちが過去に実施してきた事例を共有しながら、課題を抽出。後半では課題をもとに目的とターゲット、内容を話し合い、企画概要を組み立てていきます。

すでにエシカル消費にまつわるイベントを多く開催してきた参加者も多く、あるグループでは、400人規模のマルシェや、子ども向けワークショップを開催してきた事例を起点に意見交換が盛んに行われていました。

このグループの参加者たちの意見が一致したのは、重要視すべきは参加人数の多さではないということ。廃材を用いたワークショップでは、材料の安定的な確保が難しいことから、参加者の人数を制限することで「持続性が担保できる」「メッセージが伝えやすくなる」「フィードバックが取りやすくなる」といった多くのメリットが生まれるのでは、という結論に至ります。

また、別のグループでは、イベントの参加者の感想が「楽しかった」で終わってしまい、なかなかその先にある「エシカル消費」というメッセージが十分に伝えられないことが課題として挙げられました。

議論から見えてきたのは、メッセージを伝えるための手段としては「テーマを伝えるためのストーリー性」と「目的の具体化」が不可欠であり、そして継続的な開催のためにはイベントを収益化することも重要であるということでした。

各班の議論のなかで共通していたのが、「エシカル消費」というテーマをいかに「自分ごと」化していけるか、という点。あるグループでは「子どもにエシカル消費について尋ねられた時、答えられる大人が少ないのでは」との課題が挙がり、保護者のエシカル消費に対するリテラシーを向上させられるような企画の必要性が検討されました。子どもに向けたイベントでありながら、その先にいる保護者も巻き込むような企画を実施することができれば、より多くの人がエシカル消費を自分ごと化する機会に繋がります。

エシカル消費を子どもや若者に伝えるための体験とは?

多角的な意見が飛び出した課題の抽出と分析を経て、企画アイデアの創出へと移っていきます。

「エシカル消費」を堅苦しくなく伝え、アクションを起こす楽しさを感じてもらうことを目的にしたグループでは、親世代も巻き込むことをミッションに設定。家庭で出た生ゴミを使ったコンポストで肥料を作り、野菜の栽培、収穫までのプロセスを長期的に体験してもらうワークショップによって、継続的なアクションを促し、楽しみながらエシカル消費を習慣にしていく体験を提案しました。

コンポストを用いたアイデアは別のグループでも提案されました。このグループでは、子どもたちがコンポストで作った堆肥を地域の農園に還元し野菜を育てる、という取組を考案。中長期的な体験によって、エシカル消費を身近に感じられるストーリーが生まれるとし、収穫された野菜を地域で販売したり、グループに参加する企業が運営するレストランやブライダル施設などに提供するなど、収穫後の活用法まで含めた展開案も盛り込まれていました。

いくつかのグループで提案されたのが、廃材を用いたワークショップ。あるグループでは、子どもたち自身が「エシカル社長」として、グループ内の各メンバーが提供する廃材を用いてプロダクト制作から、ワークショップへ参加するまでのビジネスを考えてもらう「起業体験ワークショップ」というアイデアが発表されました。最終的にはマルシェへの出店に繋げることで、エシカル消費のシステムを根本から学んでもらう場づくりを創出します。

また別のグループでは、模擬店を開き、廃材を使いながら消費プロセスを考案し、値段をつけて販売できる「エシカル版職業体験型テーマパーク」を実施するというユニークなアイデアが提案されました。

ビーチクリーンに取り組むメンバーが揃っていたあるグループでは、親子を対象に、ビーチクリーンの実施と、そこで回収したプラスチックを使ったアクセサリー作りを行うワークショップを考案。まずは親世代がエシカル消費を学び、習慣とするべきであるとし、幅広い世代の参加を想定したイベントとすることを伝えました。

子どもたちが作り出したものを大人が認めるような環境を

全てのチームが発表を行なった後は、参加者同士が交流を深めるネットワーキングの時間に。名刺交換をしながら、それぞれの発表を振り返り、議論が盛り上がる場面も見受けられました。

会の締めくくりには、再度河西氏が登壇し、次のような言葉で参加者たちを激励しました。

「昨今、子どもを取り巻く環境は多くの悩みと課題を抱えており、学校だけで『生きる力』を身につけるには限界が来ています。社会経験の豊富な企業様が、家庭や学校と手を取り合い、ワークショップを通して『生きる力』を育てていく。こういった取組こそが、これからの時代はより求められていくことになるでしょう。
そのなかで、子どもたちが作り出したものを大人がきちんと認めるような社会が生まれれば、子どもたちの自己肯定感も高まり、今後、自信を持って物事に取り組めるように成長できる。そのきっかけを作り出すことが、子どもたちの未来をより良くし、社会貢献にもつながると考えています」

さまざまな企業・団体が業種や業界を横断して意見交換をし合った「TOKYOエシカルミーティング Vol.2」。お互いの強みを生かしながら、参加者同士が「エシカル消費」という目標に向かって何ができるのかを話し合う、有意義な会となりました。

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