テーマは“消費者との接点づくり”。初開催された「TOKYOエシカルミーティング」をレポート

エシカル消費を日常とするための社会的ムーブメントを創出するプロジェクト「TOKYOエシカル」は、パートナー企業・団体とともに、カンファレンスやエシカルマルシェ、子ども向けの体験企画など、さまざまな取組や事業を行ってきました。

2023年11月10日(金)には、パートナー企業・団体同士のより密な交流を図り、エシカル消費に関する意見を交換する「TOKYOエシカルミーティング vol.1」が開催されました。

初回となる今回は、20組のパートナー企業・団体から24人が参加し「消費者との接点づくり」をテーマに、エシカル消費普及のための取組や課題を共有し、取組を進めるためのアイデアを創出するグループワークを行いました。業界、業種を越えた繋がりが生まれた当日の模様をお伝えします。

岩下大志氏

冒頭は、 東京都生活文化スポーツ局 消費生活部消費者情報総括担当課長の岩下大志氏から、「エシカル消費」に関する意識調査のデータをもとに、一般消費者の意識の傾向を読み解くプレゼンテーションが行われました。

続いて登壇したのは、TOKYOエシカルのアドバイザーを務めるエシカルディレクターの坂口真生氏。

2023年の夏にOOTEMORIで開催されたマーケット型イベント『森の市』や、テレビ東京の番組『a・unエシカル百科店』など、坂口氏が関わってきたイベントやマスメディアの事例を挙げながら、今回のテーマ「消費者との接点づくり」の創出につながるヒントが語られました。

GENERATION TIME株式会社代表取締役/エシカルディレクター坂口真生氏。「今日は様々な業界のプロフェッショナルが集まっているので、エシカル消費のためのプロジェクトへのヒントをもらったり、まったく違う角度の意見に触れてみたりして、楽しみながらアイデアを出し合ってください」と参加者を激励しました

グループワーク開始。まずは課題の抽出

坂口氏の講演を経て、グループワークがスタート。
参加者たちは5つのグループに分かれ、

1.参加者がこれまで行ってきた取組事例の紹介
2.過去事例から得られた課題の抽出
3.班ごとの課題のまとめ
4.課題から考える企画の検討

という4つのステップでワークを進めていきます。

グループワークの様子

あるグループでは、それぞれが取り組んできた過去事例を振り返るなかで、多くの消費者が「エシカル」という言葉にハードルの高さを感じているのではないか、という課題が浮き彫りになりました。ある参加者は「既存の商品を否定したいわけではないけれど、エシカルを押し出すことで、それ以外ものは悪いものであるというイメージの押し付けになりかねない」というジレンマの存在を指摘。エシカルな取組を消費者にPRする際のあるべき方向性について、議論が交わされました。

他の参加者たちからは「エシカルを押し出すのではなくて、例えばサービスを利用してもらうとポイントが貯まるとか、特典がつくなどといったインセンティブによって利用者を増やし、結果的にその行動がエシカルだった、という構造が良いのではないか」「楽しい、かわいい、おいしい、心地いいからそれをやりたい、という行動を優先することが重要」といった意見が挙がりました。消費者にエシカル消費を押し付けるのではなく、自然に誘導していくための設計が必要であるとし、ワークは次のステップに進んでいきます。

では、エシカル消費の「楽しさ」や「心地いい」をどのように伝え、消費者と交流していけばいいのでしょうか。各参加者、これまでにリリース配信やSNS、インフルエンサーを起用したPRなどといった情報発信の手段を駆使してきましたが、思うように広く拡散しない点に共通の課題を感じている様子です。

これに対して、ある参加者は「一気に何万人ものユーザーにリーチすることを目指すのではなく、ゆるく長く付き合っていくことで、結果として大きな広がりが生まれるのではないか。そのためには、自分たちのブランドだけを押し出して他社を排除するのではなく、まずは関心を持ってくれる層に集まってもらう仕組みを作っていくことが良いのでは」と、中長期的にコミュニケーションを重ねていくことの有効性を訴えました。

ハードルは低く、深い体験を。消費者との接点をつくり出すアイデアを発表

課題の抽出と分析を経て、ワークは企画アイデアの創出し、各班ごとの発表へと移っていきます。このグループでは、これまでの議論を踏まえ、テーマを「エシカルに関心のない層にも、どう押し付けがましくなくエシカルを届けるか」に設定。幅広い層にエシカル消費やカーボンクレジットの概念を体感してもらうべく、親子をターゲットに、森林に行ってモミの苗木を持ち帰り、木を育てる楽しさを学んでもらう木育のイベントを企画しました。

そのほか、別のあるグループはエシカル消費に対する意識的なハードルの高さを解消することを目的に、「エシカル消費を継続してもらうこと」をテーマに設定。体験型のエシカルフリーマーケットを企画しました。地域や家庭のなかでエシカル消費の価値観に触れる機会が少ない人たちのために、継続性のあるエシカル消費のコミュニティを作ることの大切さを語りました。

エシカル消費への日常的な接点を作り出すというテーマは他のグループでも取り上げられ、地域通貨やポイントシステムなどを駆使して、街全体でエシカル消費をボトムアップする「エシカル商店街」というユニークなアイデアも飛び出しました。

また、坂口氏が事例として挙げたテレビ番組のようなメディアと企業・団体がコラボレーションし、エシカルな取組のPRと消費者の啓発を行うことができれば、エシカル消費に親しみ、認知するきっかけが日常化するのではないか、という提案をするグループもいました。

さらに、あるグループは、エシカル消費に関するイベントは子ども向けのものが多く、大人向けのコンテンツが足りていないのではないか、という視点で「カルチャー×エシカル」のイベントを発案。アニメや車、音楽、ファッションなど、モノのストーリーや価値を改めて感じたり手に取ったりしてもらうという行動から、エシカルな意識を向上させるきっかけを作ることで、「大人のエシカル教育」の場が生まれるのではないか、と語りました。

豊かなアイデアと交流が生まれたTOKYOエシカルミーティング

多様な企業や団体が意見を交わし、多角的にエシカル消費と消費者との接点について語り合った「TOKYOエシカルミーティング Vol.1 」。

会の結びに、坂口氏は「今日繋がったみなさんの関係が継続していけば良いなと思います。交わされたアイデアをさらに進化させていきたいと思いますので、ぜひ継続的な参加をしていってもらいたいです」とコメント。岩下氏も、参加者を労いながら「各グループの発表のなかで色々なアイデアが出て、私たちも参考になりました。多種多様な人や分野とクロスオーバーしながら『エシカル』を広げていきましょう」とイベントを締めくくりました。

今後の「TOKYOエシカル」の活動に向けて、さらに豊かなアイデアや企業、団体の交流が生まれる確信が生まれたことはもちろん、この場で創出されたアイデアが実現することへの期待感が高まる1日となりました。

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