TOKYOエシカル座談会#2 ファッションとエシカルの良い関係とは? 楽しくてクリエイティブな循環の未来像

プラスチック製品の使用を控えたり、食品ロスが出ないように配慮したりするのと同じように、私たちが日々着ている洋服についても、それが環境や人に優しいものかを問い、作り方や使い方を見直そうとする動きが活発になってきています。

ファッションとエシカルの良い関係とは一体どんなものでしょうか。TOKYOエシカル座談会の第2回は、服を作り、流通させて売る企業と、それらを買って使う私たち消費者、両方の視点から疑問やアイデアをぶつけ合い、エシカルなサイクルのあり方を考えていきます。

お招きしたのは、1751年創業の繊維専門商社 タキヒヨー株式会社の土屋旅人さん、明治学院大学のファッション系ボランティア団体・MG Closetの勅使河原栞さんと白井俊乃介さん、エシカルディレクターでTOKYOエシカルアドバイザーの坂口真生さん。ファッションとエシカルについての基礎知識や、ファッション産業の現場で今起こっていることなど、さまざまな話題をざっくばらんに話し合いました。

ファッションの“当たり前”が変わった瞬間とは?

−まずは、皆さんの自己紹介をお願いします。

土屋:タキヒヨー株式会社の土屋といいます。タキヒヨーは、1751年に呉服や絹織物の卸問屋から始まった会社です。日本人の服装が和装から洋装へと変わっていった時代や、グローバル化によって生産や消費行動がめまぐるしく変化した時代など、さまざまな変遷のなかで、一貫して生地や衣類の卸売業や小売業に携わってきました。

私自身は、長年ヨーロッパやアメリカのブランドへのテキスタイル(生地、織物)の輸出部門におりまして、そうしたブランドからのサステナブル素材に対する急速なニーズの高まりを受け、サステナブルアイテムや時代に合った製造工程の開発にも取り組んできました。現在は、輸出部門のマネージャーおよびサステナブルに対する全社的な取組の責任者として活動しています。

タキヒヨー株式会社 土屋旅人さん

勅使河原:明治学院大学のMG Closetというファッションサークルの代表をしている勅使河原です。MG Closetでは、「着なくなった服を再びキラキラさせる」というテーマで、服の再利用を主な活動にしています。私が代表になってからは、フリーマーケットを開催しました。SNSでの発信も大事な活動の1つで、ファッション産業の環境負荷や労働環境などの問題についても発信しています。

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2023年7月の『TOKYOエシカルマルシェ』では、以前より交流のあったタキヒヨーさんからのお声掛けで「捨てられてしまう衣服を使ったエコバッグづくり」のコラボワークショップを開催しました。

MG Closetが制作したエシカルファッション雑誌「MG Closet magazine」より

MG CLOSET 代表の勅使河原栞さん(右)、副代表の白井俊乃介さん(左)

坂口:私は、長年ファッション業界で働いたのちに独立し、現在は「エシカルディレクター」という肩書きで活動しています。

「エシカルディレクターってどんな仕事なんですか?」とよく聞かれるのですが、簡単に言えば、エシカルな取組を増やすために、企業や行政に対するコンサルティングのようなことをしています。

そういう意味では、社会起業家のような立ち位置であるとも思っており、さまざまな課題に取り組む社会起業家をもっと格好よく見せていくことで、若い方々が憧れを持ってくれるようにしていくことも、1つの目標として活動しています。

−ありがとうございます。それぞれの立場で「ファッションとエシカル消費」に携わっている皆さんですが、ファッションとの付き合い方について疑問を持ったり見直したりしてみようと思い始めたきっかけはどんなことでしたか?

勅使河原:私がMG closetに入ったのは、本当に偶然で。「なにか今後の人生に残るようなことがしたいなぁ……」と思っていたなかで、なんとなくこのサークルを選んだんです。なので、当時は「ファストファッション」という言葉すら知らなかったし、ファッションと地球環境の問題がつながっているということもまったく知りませんでした。

サークル活動を通じてファッション業界の課題について少しずつ学んで、興味を持つようになりました。今まではただ「かわいい」「安い」というような基準で洋服を買っていましたが、生産の現場にある問題を知ってからは「そういう消費行動がまわりまわって生産国で働いている人たちを苦しめている可能性があるんだ」という当事者意識が湧くようになりました。服を買うときに、一瞬立ち止まって考えてみる、という行動が身についたんだと思います。

白井:僕はもともとファッションが好きで、将来はファッションの仕事に携わりたいと思って、ファッション系サークルであるMG closetに入りました。

サークルに入るまでは、要らなくなった服は捨てていました。そこに疑問を持つという発想自体がなかったんですが、サークルの活動でフリーマーケットをやってみると、自分が「要らない」と思った服を「ほしい」と言ってくれる人が意外と多くいるんだということに気がつくんです。それからは、なるべくリサイクルに出すことを心がけるようになりました。

坂口:今の若い人たちの間ではそういう冷静な視点を持ってファッションと向き合っている人が増えていますよね。私は12年前、展示会の新しいテーマを考えていたときに、本屋で「エシカル」という言葉に出会って。そのときに「エシカル」を自分のライフワークにしようと決めて、今に至ります。

そのひらめきの背景には、両親が社会福祉事業をやっていて、私自身も障がいのある方の支援やボランティア活動をしていたり、フェアトレード商品に囲まれて育ったという家庭環境の影響があると思います。「これだ!」と雷に打たれるような感覚がありました。自分が得意としているファッションやPR・ブランディングの領域と、社会課題や環境課題の解決というテーマが重なり、やりたいアイデアがどんどん生まれていきました。

土屋:なるほど。タキヒヨーが「エシカル」に注目するようになったきっかけの1つとして大きかったのは、欧米のラグジュアリーブランドが2013年頃から「使用している素材をサステナブルなものに変えていく」というコミットメントを出すようになったことですね。ただ、服を作る現場にいるデザイナーさんからは、サステナブル素材には面白い生地がないという声が当時上がっていました。「CEOはああ言っているけど、現実的じゃないよね」というような雰囲気だったと思います。

そこで、サステナブル素材は選択肢が少ない、という状況を私たちはチャンスと捉え、サステナブルかつファッション性のある生地の開発に取り組んできました。

フランスでは衣類廃棄が禁止? ファッション業界で進むエシカルな取組

土屋:そういう開発が進んだおかげで、現在では素材や生地のバリエーションもある程度は増えてきており、海外企業との商談においては「サステナブル素材を使うことが当たり前」になっています。店頭では大きく謳われていなくても、各ブランドのホームページに行くと、どんな素材を使っていて、サステナビリティへの取組がどこまで進んでいるかを、詳しく紹介している企業がとても増えたと思います。

−海外では、エシカルファッションへの取組がずいぶん進んでいるんですね。

土屋:そうですね。メーカー側だけではなく、消費者側の意識にも違いがあると感じます。たとえば、私がイタリアに住んでいた頃に印象深かったのは、あらゆるものにドネーション(寄附)をする機会が町中に溢れているんですね。衣類は特に盛んだったと思います。シェアによって困っている人を助ける文化が、当たり前に根付いているのだなと感じました。

坂口:法律の規制のあり方も海外はかなり先に進んでいます。たとえばフランスでは、2022年に「衣類廃棄禁止令」という法律が施行され、企業が売れ残りの新品の衣類を廃棄することが全面的に禁止されました。

また、もう1つご紹介したいのが、私は「ファッションアクト法」と呼んでいる、まもなく制定が決まりそうなニューヨーク州の法案です。これは、年間1億ドル以上の売上を計上し、ニューヨーク州でビジネスを行うアパレルまたはフットウェア企業に対して、CO2の排出量や水質資源の管理状況、素材の内訳、賃金の中央値といった情報の開示を義務付けるという法律で、違反すると「違反企業リスト」に掲載されたり、年間売上高の2%という重い罰金が課されたりする可能性があります。

日本のファッションメーカーを含め、世界の有名ブランドのほとんどがニューヨークに出店していますので、全世界のファッション産業に影響を与える法案として、いま非常に注目が集まっているんです。

ファッション産業は「大きくて」「複雑」だからこそ見えにくいことがある

−ファッション業界では、エシカルなあり方に転換するための取組がいろいろな場面で進んでいるのですね。改善されるべき主なトピックとしては「環境負荷」や「労働環境」があるという前提で話を進めてきましたが、改めてファッション産業が抱えている課題の特徴について教えていただけますか?

坂口:まず、ファッション産業は「とても巨大な産業」なんですね。水の消費量とCO2の排出量が高い産業と言われていて、たとえば服1着つくるのには約2,300l(浴槽約11杯分)の水が使われ、CO2が約25.5kg排出されます。国連貿易開発会議(UNCTAD)によれば、繊維・アパレル産業は、石油産業に次いで第2位の環境汚染産業とされています。汚染の原因として代表的なのは、製造過程で出る端材ごみや、生産国における土壌汚染、水質汚染など。そこに労働環境の問題が加わります。

ファッション業界のもう1つの特徴は「サプライチェーン(※)が長く複雑」な点にあります。「より安く、より多く」を追い求めていった結果、かつて国内にあった工場は賃金の安い海外へと移され、業界全体のグローバルな分業化が進んでいきました。サプライチェーンが長く複雑になったことで、現在流通している既成服の多くは、どんな原料から、どこで、どんな風にして作られた衣服なのか、ひと口には言えないものがほとんどだと思います。

※サプライチェーン:製品の原材料・部品の調達から、製造、在庫管理、配送、販売、消費までの全体の一連の流れ

土屋:そうですね。いま、日本の衣服の輸入割合は98%を超えていますが、そのうち、サプライチェーンが可視化されている商品はほとんどありません。私たちの手にする衣服によって、新興国の人々の生活や環境にどれほどの負荷がかかっているのかが、ほとんど「見える化」されていないんです。そこが、他の業界に比べてファッション業界が大きく遅れている部分です。

私たちのような企業は、やはりこのサプライチェーンの透明性(※1)を高めていく必要があると思っています。しかし、それと同時に、スーパーで「生産者の顔が見える」食品を選ぶのと同じような感覚で、消費者側がファッションに対してもトレーサビリティ(※2)や安心を求めていくような風潮が生まれることも重要だと思っています。

※1 サプライチェーンの透明性 :サプライチェーンの全容を企業が把握し、社内外にその情報を共有すること

※2 トレーサビリティ:その製品がどこで誰によってどのようにして作られ、どのような経路を辿って流通し、誰のもとに届けられたかを追跡し可視化すること

 

サステナブルファッションは似たようなデザインばかり?

−国内外のメーカーやブランドの服作りを支えてきたタキヒヨーさんは、今、ファッション産業のエシカル化を進めるためにどのような取組をされているのでしょうか?

土屋:「NO WASTE PROJECT」というファッションのリサイクルを実現するための仕組みを提供しています。これは、製品を作る際にどうしても発生してしまう生地の裁断くずや店頭で回収した衣服を繊維に戻し、再び糸や生地、衣服に生まれ変わらせるという循環を作り出すものです。国内では、スノーピークさんやしまむらさんにNO WASTE PROJECTのスキームを活用していただいており、店頭で回収した商品を、衣服やノベルティ、ショッパー、リーフレットなどにリサイクルしています。

−回収品から作られた商品は、そうでないものと比べて価格やデザインの面でどのような違いがあるのでしょうか。

土屋:「NO WASTE PROJECT」のスキームを使った場合、糸の値段自体は、従来のコットンとほとんど変わりません。これは、しまむらさんのような大きな企業にご協力いただくことでスケールメリットを担保できているからこそ実現できているという面も大きいです。

デザインについても、生地を編む段階では従来のコットンと同じように自由に使うことができます。現在は、リサイクル品であることを可視化するために、あえて端材の質感を残したような生地をリクエストされることも多いですが、従来品と同じような真っ白な製品を作ることもできます。混紡と言って、ポリエステルなどの別の素材と組み合わせて生地をつくることも可能です。

ただ、糸を選ぶ段階ではまだ選択肢に制約があります。非常に細いサイズの糸は技術的にまだ使用できないので、そういった糸を使うようなファッション性の高いラグジュアリーな衣服をサステナブル素材でつくりたい場合には、まだまだ作り手側の試行錯誤が必要な状況はあります。

坂口:サステナビリティとデザイン性の両立は、重要かつ面白いポイントですよね。今日も、全身アップサイクルのプロダクトを身に着けているんですが、同じアップサイクル品でも、海外ブランドと国内ブランドでデザインの幅にかなり差があります。

坂口さんがこの日着用していた洋服は、いずれもアップサイクル品で、パーカーとパンツが国産、ジャケットは海外ブランドのものなのだそう

勅使河原:たしかに、サステナブル素材を使用した衣服には「似たようなデザインが多い」というイメージがあります。

土屋:そうなんです。ファッションって本来は自由で「遊び」の部分が大きいものであるべきだと思うので、もっとデザインに選択肢があると、サステナブルファッションが広まっていくと思うんです。現在はサステナビリティを取り入れようとすると、素材面や技術面での制約からどうしてもベーシックなアイテムになってしまう。この点は、日本のファッション業界が海外に比べて特に遅れている部分だと思います。

海外企業との商談では、サステナブル素材であることは当たり前で、その上でファッション性を強く求められます。サステナブルな製造インフラという構造的な部分と、ファッション性という感性に訴える部分をいかに融合させるか。これが、これから取り組むべき重要なテーマになってくるのではないかと思います。

「本当にエシカルなもの」を見分けることは可能? 矛盾と向き合うことの大切さ

勅使河原:サステナブルな素材や製法のエシカルファッションを選ぼうとするときに、私がいち消費者としていつも気になっているのが、値段です。あるブランドの商品がサステナブル素材に切り替わる以前と以降で、値段がほとんど変わっていないということがありますよね。私のイメージでは、エシカルな作り方に変えるとコストが上がって値段も高くなるはずだと思うのですが、それが変わらないということはいわゆる「エシカルウォッシュ(※)」な製品なのかな?という疑いにもつながってしまいます。

それが本当にエシカルな製品なのか、または表面的にそう謳っているだけのものなのか、良い見分け方を知りたいんです。

※エシカルウォッシュ:広告などでエシカルな取組をしているように見せかけているが、実際はそうではない製品のこと

土屋:1つの判断基準として、環境や人権に配慮されたプロダクトであることを証明する国際認証があります。オーガニック素材を使用したアパレル製品の認証である「GOTS」「OCS」、オーガニックウールの認証である「RWS」「ZQ」、リサイクル製品の認証である「GRS」などですね。ただ、これらの認証は今のところ、国内の製品ではあまり流通していません。

坂口:「本当にサステナブルな商品なの?」という視点を持つことは、非常に大事なことだと思います。正直な話をすると、私たちのような専門家にも見抜けないものは沢山あるというのが現状です。私たちはずっと、「矛盾」と対峙して、共存しているんです。例えば、ファストファッションと呼ばれるブランドが、エシカルファッションに取り組んでいることも、ある種の矛盾ですよね。そして、その矛盾をどのように判断するのかは、私たち一人ひとりに委ねられているんです。

だからこそ、行動して、疑問を持って、その企業がどこまで真剣に問題に取り組んでいるのかを調べてほしいんです。ブランドのウェブサイトを見てみて、それでもわからなければコメントを書き込んだり、メールで問い合わせしてみてもいい。店頭だったらお店の店員さんに質問をしてみてもいいと思うんですよね。そうした過程を通じて、一人ひとりがこの矛盾との付き合い方を考えていくことが、環境の課題を解決するために大事なことなんじゃないかと思っています。

エシカルなアイテムを選ぶ動機はどこから来る?

白井:環境省が発表していた「ファッションと環境」に関する調査というものがあるんですが、そこには国内の衣類の新規供給量約81トンのうち約79トンが海外の企業によるもので、国内で作られたものは2トンにしか満たないとありました。土屋さんがおっしゃったような国際認証を受けた製品を普及させていくためには、日本向けの服を作っている海外の企業を巻き込んでいかなくてはいけないということですか?

土屋:そうですね。さきほど坂口さんがおっしゃったように、ファッション業界のサプライチェーンは長く複雑です。1枚の衣服が出来上がるまでに多くの工場が関わっているわけですが、国際認証を取得するためには、それらすべての工場から環境や人権に配慮した工場であることを証明する証明書を取り寄せる必要があります

当然、そこには膨大な作業コストがかかり、そのコストは商品の価格に反映されていきます。デザイン性が高く、流通量が少ないものの場合には、さらに価格が上がります。消費者側がどの程度の価格上昇までなら許容してくれるのか…。作る側としては気になるところです。

勅使河原:例えば、今年の夏はアメリカンスリーブがすごく流行ったと思うんですけど、ファストファッションブランドが2,900円ぐらいの価格で売っていたのに対して、私が見たエシカルファッションブランドのものは8,000円ぐらいだったんですね。デザインはほとんど変わらないものに倍以上の値段がついていると、高い方には手が出ないというのが正直なところでした。その価格に見合うだけのスペシャルティがほしいと思ってしまいます。

土屋:そうですよね。ファッションって好きなスタイルに自分を飾るためのものでもあるわけなので、そういう欲求を満たしてくれるものになっていないと選んでもらえないと思うんです。だからこそ、その服を選ぶことで周囲からの評価が上がるとか、「これを買っている自分が好き」と思えるようなものを作っていくことが大事なんじゃないかな。違いがわからないものだったら、「こっそり安い方を買っちゃえ」って思うのが普通の心理だと思います。

クリエイティブに楽しみながら、小さなことから始めてみよう

−ファッションとエシカルとひとくちに言っても、服を作る工程を変えていくだけでなく、そもそもなぜ人はファッションを必要とするのか、という根本的な考え方についても向き合う必要があるわけですね。皆さんのお話から多くのヒントが得られたように思います。最後に、これから「エシカルファッションを取り入れたい」と考えている読者のために、メッセージをいただけますか。

坂口:「何が良くて、何が悪いか」は、結局個人の基準でしかないと思っています。ですので、エシカルブランドの服を買うのでも、服を買う代わりにレンタルサービスを利用するのでも、「良いな」と思ったらまずはやってみてほしい。行動に移すと、「本当にこれで『良い』のだろうか」という疑問が出てくる。解決するために自分で調べてみる。そうした経験を積むことで、自分の意見が持てるようになると思うんです。

エシカルファッションって、小難しいものだと思われがちですけど、楽しそうに取り組んでいる人の発信を参考にして、無理のない範囲で生活に取り入れていただけるといいのかなと思います。

勅使河原:私もやっぱり、「ちょっとしたこと」が大事だと思っています。長く使えるはずだった衣服が、いつの間にか「消耗品」になってしまったわけで。そこに疑問を持ちながら、新しい服を買うときに「本当にこの服を長く着ていけるのかな」と一瞬でも考えることが、エシカル消費に取り組むための最初の一歩になるんじゃないかと思います。

白井:そうですね。MG ClosetがSNSでの発信に力を入れているのは、そうした一歩を作るきっかけが重要だと考えているからです。これらもエシカルファッションに関する投稿をしていくので、ぜひ見てみていただけたら嬉しいです!

土屋:まずは身近なことから、ですね。持っている服を長く着ることもエシカルだと思いますし、古着をリメイクして違う着方をする、新しい服を買うときに、ブランドのホームページを見てサステナブルの謳われ方を見比べてみる、着なくなった服を捨てる代わりにフリマアプリに出品してみる。一人ひとりの力は小さいけれど、みんなの意識が少しずつ変わることで、大きなムーブメントが起きるんじゃないかと思っています。

あとは、「楽しむ」ことが大事だと思います。ファッション業界の課題は大きくて複雑ですが、それはその分面白くて、可能性に溢れているということ。そして、その課題を解くということは、クリエイティビティを発揮するということでもあると思うんです。前例もあまりない中で「エシカル」に向かって前に進んでいくのは大変ではありますが、その分、変化が起きたときの達成感も大きいです。次々に突きつけられる難題に対して、「そう来たか!いっちょやったるぞ~!」と楽しむマインドを持つことが重要だと思いますね。

取材後も続いたディスカッション。土屋さんと坂口さんからは、例えば学園祭のチームTシャツをサステナブル素材で作って、その後10年間使い続けられるようなものにするにはどんなデザインにするといいのか、ということを仲間と一緒に考えてみる。エシカルファッションの実践は、そういうわくわくするようなクリエイティビティを発揮するチャンスなのではないか、というアドバイスを勅使河原さんと白井さんに送っていました。

ファッションというものの本質を見失うことなく持続可能なものに変えていくという共通の視点から、個人でできること、企業が取り組まなくてはいけないこと、行政レベルで変えていなかくてはいかないことなど、具体的な未来像が見えてきました。自分のなかに生まれた疑問や気づきを大切に、今日から少しずつ実践していきましょう。

インタビュアー:藤田マリ子

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