ファッションショーにアップサイクル体験。品川区のエシカルな取組が集った「エシカルイベントinしながわ」をレポート

2023年10月22日(日)、中小企業センターで「第2回 エシカルイベントinしながわ」が開催されました。昨年からスタートしたこのイベントは、人や社会、地域、環境に優しいものを購入する消費習慣の大切さを、楽しみながら学ぶことを目的にしています。

今年は、品川区を拠点に活動する企業や団体が手がけるエシカルなモノや取組を「社会」「環境」「人」「地域」の4つのテーマに沿って紹介。ファッションショーやトークショー、物販、映画上映、ワークショップなどが行われました。子どもから高齢者まで幅広い層が来場し、会場は賑わいを見せていました。

エシカルをテーマにした落語&ファッションショー

ステージは、噺家の立川がじら氏による「SDGs・エシカル消費ってなに?私たちのできること」と題したエシカル落語からスタート。小噺を交えながら分かりやすくエシカル消費について説明しました。

続いて、品川区長の森澤恭子氏としながわ観光大使であるシナモロールが登壇します。森澤氏は、ベナン共和国の伝統布であるバティックで作られたセットアップを着用して登場。近年、ヨーロッパを中心にファッション業界でエシカルな素材、製法を意識した取組が広まっていることに言及しながら、エシカルファッションを契機としたエシカル消費につながる取組の拡大と理解促進を呼びかけました。

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エシカルファッションショーでは、「一生物」をテーマに7つのブランドが登場。トップバッターは、シミや汚れなど、さまざまな事情から廃棄されてしまう正絹の着物を、洗えるシルクの洋服として再生するアップサイクルブランド KUKURI KIMONO。

次に登場したのは、森澤氏も着ていたAFRICL。同ブランドのアイテムはすべてユニセックス・フリーサイズ。伝統を繋ぐことを目指し、西アフリカ ベナン共和国の伝統生地バティックを用いて年齢性別、体型に関わらず、その人の暮らしに合わせて着ることができる服作りを行っています。

AFRICLのワンピースを着た女性モデルが手に持っているのは、天然素材・ラフィアを使用したバッグや小物を販売しているスルシィのバッグ。すべてフィリピン・セブ島の女性の編み子さんが手がけています。現地のライフスタイルを尊重した労働環境を提供し、仕事を得る機会に恵まれない女性たちに編み方の技術指導を行うことで、雇用創出と自立支援を行っています。

そのほかにも、品川区を拠点とするファッションブランドのアイテムを身にまとったモデルたちがランウェイを歩きます。

世界中から集めたユニークなクラフトパーツやサステナブル素材を使用し、伝統技法を現代ファッションへ落とし込んだブランド by the Sun

汚れにくく、洗ってもマイクロプラスティックを出さないメリノウールを使用したイージーフィットスーツなどを作るW.E.N.O

ステージの企画・運営協力として参加したenithicalのオーナー・東矢恭子氏は、「良い意味で流行に左右されずに作り続け、評価されてきたブランドさんを紹介しています。本当に心地よく使えるものを見極める参考にしてくれたらうれしいです」とショーに込めた思いを語ってくれました。

ジェンダーに振り回されない自分を見つけるトークショー

イベントの中盤には、AFRICLを主宰する沖田紘子氏と大井海岸にある「芸者置屋 まつ乃家」の女将・まつ乃家栄太朗氏による「ファッションとジェンダー」をテーマにしたトークショーが行われました。社会に与えられる役割としてのジェンダーに振り回されることなく、確固としたアイデンティティを築いてきた2人が、どのような境遇の中でどんな考え方を培ってきたのかが語られました。

栄太朗氏は「着るものや環境がジェンダーの判断において大きく影響している」と指摘。10歳から芸事の世界に入り、日本で唯一の女形芸者として、お座敷に上がりながら芸道に精進してきた栄太朗氏。女性的な外見・身なりに親しむことからスタートし、女性的な踊りや仕草といった表現を教えてもらい、芸者としての女性性を身につけてきたと自身の生い立ちについて話します。

その上で「自己表現はとても大切です。立場があるからこそ自己表現できたり、洋服を着ることが自己表現をするきっかけになったりします」と、自分をどう見せたいのかを自問しそれに応える行動を取ることの重要性を語りました。

一方、沖田氏は、服をまとう意味は他者と自分に向けての2つの在り方があると指摘。目上の人と会う時はジャケットを着るといった相手を尊重して服を選ぶ行為は他者のため。気分を上げるためにお気に入りの服を選ぶのは自分のため。「他者のために身なりを整えるということも、相手が自分と会った時にうれしい気持ちになってもらいたいという気持ちを込めて行う幸せな行為だと思います」と、相手のことを考えて服を選ぶことも、服をまとうことの楽しさや魅力のひとつだと語りました。

この後、栄太朗氏による伝統芸披露が行われました。1曲目は秋の歌である「もみじの橋」、2曲目は、お座敷ではポピュラーな「奴さん」を披露。艶やかな舞と唄に、会場の人々はしばし釘付けになりました。

直すという選択肢を知る「おもちゃの病院」

会場には、品川区で30年以上にわたっておもちゃの修理を行ってきた「おもちゃの病院」も登場。ボランティアのおもちゃ医師が壊れた玩具を無料で修理してくれました。子どもの目の前で壊れた原因を説明することで、大切に使い続ける意識を持ち、上手な遊び方を理解してもらうことを目的としています。

おもちゃの病院は毎週土曜(受付は隔週)に中小企業センター4階会議室で開設しており、年間500個前後が入院(修理)しているそうです。参加していたベテランの医師(修理担当スタッフ)によると「品川区は修理用の機材などを手厚くサポートしてくれている」とのこと。近年は半導体を用いた玩具が増えており、修理できないケースも多いそうですが「壊れたら捨てる」という選択肢しかなかった親子が、おもちゃの病院を知ることで、おもちゃの扱い方や意識が変わったという声は多いそうです。

子どもが能動的に楽しめる古着アップサイクル体験

午後からは、参加者が持ち込んだ古着に布⽤の塗料を使って、ステンシルシートでアートリメイクするワークショップが行われました。主催は、子どもたちが能動的に楽しめる「クリエーティブなホンモノ体験」を提供している一般社団法人キッズクルーです。

ワークショップ参加者は子ども9人、大人11人、ファッションショー参加者は子ども7人、大人4人でした。子どもを中心に親子で創意工夫を楽しむ体験をし、楽しんでいました

ワークショップで製作した衣装を披露するファッションショーも実施。こだわりのアップサイクル衣装を着た参加者がランウェイを歩きました。 その中には、シャツを割いてスカートにするといった、ユニークな方法のリメイクファッションもありました。

品川発のエシカルな製品が並ぶ物販ブース

物販ブースには、ファッションショーに登場したブランド(AFRICL、enithical)や企業も出店。スルシィのブースではラフィアバッグなどを販売したほか、1本のかぎ針でブローチや指輪を作るワークショップも行われました。

このほか、中小企業や地域コミュニティ、エシカル消費者を繋ぎ、アクションを起こすための支援を行っている一般社団法人コレクティブ・アクションのブースでは、鹿の皮を使ったバンド作りのワークショップを実施。

リフォームOB会による古着物のリメイク服や小物の販売や、品川区伝統工芸保存会からは、和裁の技術を後世に残すために活動している和裁職人の釼持博氏の手による雑貨販売なども行われました。

楽しくサステナビリティを学べる環境ブース

環境コーナーでは、東京サラヤ株式会社による、自然由来の石けんを使った「ぷるぷる石鹸作り」などのワークショップが開かれ、20組程の参加者が集まりました。

ロビーの物販コーナーでは、品川区商店街連合会加盟のcompass coffeeによる国際フェアトレード認証を受けた東ティモール産コーヒーの試飲や、環境に優しい竹を使った料理道具ブランド・九雲による竹製のまな板、栃木県のワタナベファームによる平飼い鶏の卵などが並びます。また、生活クラブ生活協同組合による安全・安心なオリジナル商品、長野県飯田市からは地域の特産品や自然食品の販売が行われました。他にも子ども食堂を運営しているラ ヴィ クレールがお菓子の販売とフードドライブを行いました。

子どもから大人まで 環境問題を学べる映画「マイクロプラスチック ・ストーリー 〜ぼくらが作る2050年〜」の上映会も

東日本大震災の被災地である宮城県塩竈市で生まれた安全でエコな「段ブロック」コーナー

スマートフォンを片手に会場内の5ヶ所に散りばめられたQRコードを読み取るデジタルスタンプラリーが行われ、全てのスタンプを集めた参加者には景品としてエシカルグッズがプレゼントされていました

充実したコンテンツで来場者を楽しませた「第2回 エシカルイベント in しながわ」。親子で一緒に複数のワークショップにチャレンジしてくれた参加者からは「服やモノは汚れたり壊れたりしたら捨てるという感覚でしたが、今日のワークショップで経験したことを日常に持ち帰って、長く大切に使っていくという習慣を身につけたいです」との声が寄せられ、エシカルな取組を身近に感じることができたようでした。エシカルタウンとして盛り上がりを見せる品川区から、これからも目が離せません。

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