パートナー企業・団体の取組紹介【イケア・ジャパン】

サステナブルな暮らしを考える
〜家具・生活雑貨から食料品まで気軽に楽しくエシカル消費〜【イケア・ジャパン】
 

イケア・ジャパン株式会社
IKEA渋谷・原宿・新宿マーケットマネジャー
青木エリナ様

今回は、「TOKYOエシカル」のパートナー企業、イケア・ジャパン株式会社のエシカルな取組を紹介します。渋谷駅前から徒歩数分の場所に立地し多くの人が訪れる「IKEA渋谷」で、店長の青木さんが出迎えてくれました。エシカルにつながる考え方から商品・店舗における工夫など「IKEA渋谷」を回りながら一緒に身近なエシカルを見つけにいきましょう!

創業時から追求する暮らしに溶け込むサステナビリティ

イケアは「あらゆる場所に住む人々の暮らしをよくしたい」という思いで、1943年にスウェーデンで創業された企業です。今ではフランチャイズ方式でグローバルに家具や雑貨などの販売を行っており、日本では2002年よりイケア・ジャパンとして事業展開しています。

最初にイケアのエシカル消費への考え方やTOKYOエシカルへの思いを伺いました。

「私たちは企業理念として、『より快適な毎日を、より多くの方々に』という考え方を大事にしています。この「快適な毎日」という中には、サステナビリティの考え方が最初から含まれており、また、人にも地球にもポジティブな企業でありたいという思いから、『健康的でサステナブルな暮らし』『サーキュラー&クライメートポジティブ』『公平性と平等性』の3つを重点に取り組んできました。サステナブルな素材を用いた商品を使っていただくこと、公正な環境で作られた食品を日常の食卓に並べていただくこと、商品輸送をEVトラックで行うなど、あらゆる事業領域に一貫している考え方です。

スウェーデンでは、暮らしにおいて、エシカルであることが当たり前に捉えられています。日本でもそういった暮らしの感覚がもっと広がれば、より良い未来にもつながるでしょう。スウェーデンの全人口よりも多くの人々が住んでいる東京で、1人ひとりがよりサステナブルな暮らしに目を向け、広がっていけば、大きなムーブメントになるだろうと感じています。「TOKYOエシカル」に、イケアが行ってきたこと、今からやろうとしていることをうまく結びつけて、パートナー企業として、エシカル消費の普及につなげていきたいです。

イケアの商品はすべて「デモクラティックデザイン」と呼ばれる5つの要素(「優れたデザイン」「機能性」「品質」「サステナビリティ」「低価格」)をもとに開発されており、その中に『サステナビリティ』という判断軸を組み込んでいるのが特徴です。店舗に来ていただくとエシカル消費をとても身近に感じていただけると思います。」

店内を見て回るのが楽しみになってきました!
ここからは、青木さんに、売り場でエシカルな取組をご案内してもらいましょう!

世界に一つだけのファッショナブルなクッションカバーの購入が難民女性などの自立支援に

最初に案内してもらったのは、日常の暮らしにエシカル消費をどのように取り入れるのか具体的なイメージがわいてくる「ルームセット」スペースです。サステナブルな素材を使ったクッションやラグ、竹素材やLED電球などが工夫して活用されている空間となっています。照明器具は2015年からすべてLED電球仕様に切り替えられたとのことで、エネルギー消費の効率化についても考えさせられる場所になっています。

セットの展示物の中のクッションに目が留まりました。カバーには、装飾的な模様と職人のイニシャルが手刺しで刺繍されています。

「このクッションカバーは、ヨルダン人女性、シリア難民女性に長期的な生計手段を提供し、女性を経済的にエンパワーされているJRF*1で働く方がハンドメイドで作ったもので1つひとつ、模様が違うんです。
世界で特に雇用不足が深刻な地域で、才能ある女性たちに仕事を創出することを目的としている商品ということにも、注目していただけたらと思います」

写真提供:イケア・ジャパン

店内を見ていると、いろいろなところに緑色の丸い表示があることに気がつきました。

「イケア店舗では、何がサステナビリティにつながるのかという説明を共通の緑色の表示でお伝えしています。環境負荷を減らすなどサステナブルな暮らしをしたいと考えている方が、説明を見て、納得して購入していかれることもあります」

寝具売り場を眺めながら奥に向かうと、クジラのぬいぐるみがたくさん積まれていました。

「こちらは海洋プラスチックごみなどを原料にしたリサイクルポリエステルを100%使用して作ったものです。今年度の新商品なのですが、ただかわいいというだけではなく、お子さまと一緒に海洋環境などについて話す機会を持っていただけたらうれしいです。
イケアでは『2030年までにすべての製品を、再生可能素材またはリサイクル素材で製造する』という目標を掲げており、その先駆的な商品として注目されています。」

次に、「サーキュラーマーケット」というスペースに向かいました。

「サーキュラーエコノミー(循環型経済)という言葉がありますが、イケアとしてその考えに貢献しようというところから、展示品、パッケージのみダメージの商品、お客様からの返品商品(販売基準を満たすもの)などを、店舗内に設置されている『サーキュラーマーケット』にてさらにお手ごろな値段で販売しています。
また、大型店舗では、家具買取りサービスを実施しています。不要になったイケアの家具を買取り、家具の状態に応じた金額をリターンカードで還元します。買取った家具は、メンテナンスを施したうえで、『サーキュラーマーケット』で販売しています。」

日々の"食"からはじめるエシカル消費

最上階の7階へ上がると、スウェーデンレストランがあります。

「ここで提供している食材も、持続可能であることが大きなコンセプトです。たとえば人気メニューの1つであるサーモンは、家庭用真空パックでも売っていますが、すべて水産養殖管理協議会の発行している「ASC認証」を取得した素材を使っています。この認証は、海の自然を守り、働く人たちの公正性が確認されている素材に対して発行されるものです。世界では乱獲等によって海の生態系が壊れてしまうことも起こっていますが、それを助長しないような選択も、エシカル消費の一種です。」

また、北欧料理の定番として使われるミートボールに代わり、野菜や豆などの植物由来の原材料で作った「プラントボール」による料理プレートも紹介してもらいました。

「『プラントボール』にすることで、温室効果ガスの排出量が通常のミートボールの96%も削減できます。1週間お肉を食べるとしたら、1日だけプラントベースに変えてみようかなと思ってもらえればというように、毎日の暮らしでの選択の幅を広げる、少し変えてみるといったスタイルを提案しています。
また、イケアの方針として、プラントベース商品は必ず類似する肉・魚商品の同価格以下に設定しています。選択していただくためには価格も重要で、プラントベース商品は高いというイメージがあるかもしれませんが、グローバルで同一商品を開発・展開している強みもあり、この同価格以下という設定にはこだわっています。」

キッチン用品のフロアにもエシカルな商品がありました。

「フードロスが大きな社会問題になっているので、できるだけ食品を捨てずに活用していただきたいと考えて作ったのが蓋つき保存容器です。目新しいものではないのですが、楽に使えるとおすすめしているのはガラス容器に竹の蓋がついたタイプです。実はこれ、蓋を敷板にして器のように使い、残ったらそのまま蓋を戻すことができます。洗い物も減り、ガラス容器はそのままオーブンに入れることもできるので家事の負担も減らせます。フードキーパーセットなども含め、お手ごろな価格でご提供することで、気軽に楽しく、暮らしの中に取り入れていただければと考えています。」

そして、1階のスウェーデンフードマーケットにも、さまざまなエシカルな食料品が並んでいます。たとえばチョコレートやコーヒー。原料であるカカオは、持続可能な環境で作られていることを示す「UTZ認証」を取得していることが明示されています。なんと99円と格安なチョコレートも。しかし、この価格は、梱包や積み込みの工夫による輸送の徹底的な効率化といった考え抜かれた企業の取組によって実現されています。すきまのない梱包にすることなどでコストや環境負荷が抑えられているのです。

入り口脇には給水サーバーが置かれています。こちらは、mymizu(マイミズ)アプリ*2と提携したもので、使われた分だけ「どれだけペットボトルの消費数を減らせたか」が表示されます。誰でも気軽に立ち寄れる場所に置かれており、多くの人がマイボトルを手に立ち寄っています。

エシカルを身近に、毎日の暮らしの当たり前にしていくきっかけに

イケアが全世界で行った調査によると、「理想の家に、サステナブルな暮らしは重要か」という設問に対して、重要と答えた人は日本ではわずか8%(世界22%)だったそうです*3。また、日本の消費者も年々サステナブルな暮らしに興味のある方は増えてきているようですが、「値段が高くて手が出せないと考えている」「環境に良いものを購入したいと思っても、何を選択するのが正しいのかわからない」「サステナブルな暮らし=便利な暮らしを諦めることという誤解がある」といった声も見えてきたそうです。だからこそイケアでは、身近な暮らしにサステナビリティを取り入れていけるように、シンプルでわかりやすく、かつお手ごろ価格での商品提供にこだわっているということです。

「TOKYOエシカル」の目指すエシカル消費を身近にするためのヒントがたくさんあります。

「弊社の各店舗ではストアイベントやワークショップなどでも、サステナブルな暮らしを実現できるアイデアを届ける機会を設けています。サステナブルな暮らしを実現できる商品やソリューション以外にも、イケアの多岐にわたる取組を皆さまに紹介することが、サステナブルな暮らしについて考えていただくきっかけになるかもしれません。『TOKYOエシカル』の他のパートナー企業・団体の皆さまとも積極的に協働して、よりサステナブルな未来を一緒に実現していきたいと思っています。」

*1 Jordan River Foundation https://www.jordanriver.jo/en/about
*2 一般社団法人Social Innovation Japanが運営するプロジェクトで、カフェや公共施設など無料で給水できる場所を紹介する取組
*3 日本を調査対象に含むLife at Home Report 2022を発表|IKEA【公式】 – IKEA

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