パートナー企業・団体の取組紹介【青山学院大学】

私たちの選択が、未来にとっての大事な一歩
~学びの場で主体的にフェアトレード活動に挑戦~【青山学院大学】
 

青山学院大学
副学長 稲積 宏誠 様
経営学部経営学科 2年 鈴木 風夏 様
総合文化政策学部 2年 野木 愛美 様
経営学部マーケティング学科 2年 平松 愛生 様


今回は「TOKYOエシカル」パートナーの青山学院大学のエシカルな取組や思いについて、学生や副学長からお話いただきました。エシカル消費につながるフェアトレード。学生がどのように考え、どのような活動を行っているのか、企業など学外との連携についてもご注目ください。

中高生時代の様々な出会いが、大学での主体的なエシカルな活動に

―最初に自己紹介と、どのような活動をしているかを教えてください

鈴木 経営学部経営学科2年の鈴木風夏と申します。商品開発やマーケティングを学ぶゼミに所属するとともに、経営学部学生リーダーズ(School of Business Student Leaders/以下SBSL)という団体活動にも参加しています。 SBSLの存在は、青山学院大学を選んだ理由の1つでした。高校生の頃からボランティア活動に興味があり、大学生なったらSBSLを通して、世の中に貢献したい考えました。団体内にはいろいろなプロジェクトがあります。私は去年3つのプロジェクトに参加していました。具体的には、フェアトレードプロジェクト、SDGsプロジェクト、AMCAプロジェクトの3つになります。フェアトレードプロジェクトは引き続き今年も参加させていただいております。

平松 経営学部マーケティング学科2年の平松愛生です。私もSBSLの活動をしていて、今月からフェアトレードプロジェクトのマネージャーを務めることになりました。マーケティング学科を選んだのは、広告に興味があったからです。いくら良いものを作っても、人に伝わらなければ売れませんし、伝え方次第で商品の売り上げが変わることもあるというところにおもしろさを感じました。現在はマーケティングだけでなく、経営戦略なども学んでいます。

野木 総合文化政策学部2年の野木愛美です。この学部には「ラボ」と言われる演習授業があって、企業や官公庁などと連携する実践活動が行われています。実はこのラボがやりたくて、私はこの学部を選びました。今、参加しているのがフェアトレード・ラボで、ここでは企業とコラボレーションして商品開発をしたり、フェアトレードについての発信を行ったりしています。高校で出前授業をする活動もあって、フェアトレードについてどうやったら伝わるだろうと考えながら授業をしたこともあります。

―フェアトレードやエシカルについて興味を持ったきっかけは何だったのでしょうか?

平松 私は中学生の時に、SNSでアメリカの古着倉庫の写真を見たのがきっかけです。倉庫に古着が積みあがっていて、上のほうの洋服を取るためにいくつもの洋服を踏んで取りにいくという写真で、大量生産・大量消費する社会では、これだけの服が捨てられるのかと衝撃を受けました。同時に興味を持ったのは、環境にも社会にも優しいエシカルという考え方です。この写真を発信していたのはある洋服ブランドのディレクターで、エシカルファッションを推進していました。そこから自分でも調べていく中で、フェアトレードという言葉も知りました。

鈴木 私は、高校の英語教材で緒方貞子さん*1に関する文章を読んだ時に、緒方さんの活動をかっこいいと思いました。ボランティア活動に興味がわいたのは、その志に刺激を受けたからです。一方で、祖父が経営をしていることから、CSRやESG投資という言葉を知る機会があり、経営の文脈でも関心を持ちました。高校3年生の時に『2030年の世界地図帳』*2という本を読んで、何か活動したいと思い始めたことも、今につながっています。

野木 私は具体的なきっかけはないのですが、高校でSDGsに関わる授業があったり、講演を聞く機会があったりして、興味を持ちました。大学でも持続可能な社会とビジネスとの関係について学んでいく中で、フェアトレードに関する活動をやってみたいと思うようになって、今のラボを選びました。

企業との連携やフェアトレードの商品開発を通じてさらに深まるエシカル

―経営学部学生リーダーズやフェアトレード・ラボでの活動をする中で、印象的だったこと、工夫したことなどを教えてください

平松 昨年は、株式会社フェアトレードコットンイニシアティブ様とのコラボレーションで、フェアトレードのオーガニックコットンを使ったハンカチを作りました。商品になるまでには試行錯誤の連続でした。たとえば青学カラーに染めたいという話があったのですが、染めるのに大量の水が必要で、廃棄される水問題も生じます。結果、白無地のままにしました。また、どうしても価格が高めになるのが悩ましかったです。入試説明会などのイベントの時に手売りしたのですが、多くの人に理解して購入してもらうのには、なぜこの価格なのか、フェアトレードについての説明をすることが欠かせないなと実感しました。

鈴木 私も一緒にハンカチ作りを経験してきて、やはり価格のところはたくさん話し合った点でした。フェアトレードへの理解は少しずつ広がっていると思うのですが、それでも買うところまで至らない理由を突き詰めて考えたり、どんなマーケティングをしたら購買意欲が高まるかと議論したりしました。販売したときに学生活動としてフェアトレード商品を開発・販売していることに結構驚かれたので、まだまだ知られていないなというのも再認識しました。

野木 ラボの中ではフェアトレード商品開発班に所属していて、昨年は「imperfect表参道」という店舗とドリンクの共同開発・販売を行いました。生産者や環境に配慮した材料を使ったチョコミルクティーを作ったのですが、やはり私たちも価格面は1つの壁でした。また、社会貢献を謳いすぎると難しく捉えられる面があるということにも気づきました。もちろんすべての消費行動にエシカルやフェアトレードを求めることは難しいので、あまり考えすぎず気軽に始められる機会こそ大事かなと思っています。

 写真提供:青山学院大学

可能性に溢れるフェアトレードやエシカルな活動

―お互いの話を聞いてどのような感想を持ちましたか。

鈴木 総合文化政策学部のラボ活動のことをよく知らなかったので、野木さんの話を聞いて魅力的な活動だなと思いました。共通する部分もあるので、一緒にイベントなどができたらいいなと感じています。

平松 経営学部リーダーズは全部で70人くらいが所属しているのですが、班ごとに分かれるので、フェアトレードプロジェクトは6人での活動なんです。ラボの方は人数が多いので、できることが多そうな点でうらやましく感じました。

野木 フェアトレード・ラボに参加しているのが50人くらいで、同じく班に分かれて活動するのですが……確かに全テーマがフェアトレード関連なので、複数の活動が同時に動けるところはありますね。

平松 私たちは去年、商品開発と認知度向上の2つを軸にしようと決めて、活動しました。ただハンカチの商品開発が結構大変で……認知度向上は学部内でのワークショップ活動などにとどまっています。先ほどおっしゃっていた高校への出前授業なんて、いいですよね。

鈴木 フェアトレード・ラボでは勉強会とかされていますか?そういうことも一緒にできたらいいなとも思ったのですが。

野木 学ぶ機会は多少はあるのですが、やはりインプットが足りなくて、私たちももっと知識をアップデートしていきたいと感じているところです。一緒に勉強会をしたり、お互いの活動を紹介し合えたりする場を作りたいですね。フェアトレードに関するキャンペーンで協働するのも考えられるでしょうし。

―高校への出前授業など外に向けてフェアトレードについて説明して理解してもらおうとする時に工夫していることはありますか?

野木 高校の授業では、まずは公正な取引についてきちんと説明するようにしています。身近な商品を紹介したり、自分たちがフェアトレードに関する企画をやるとしたら何がしたいかを考えてもらうとか、自分事にしてもらえるような工夫をしています。

平松 手売りした時には、「安い理由は何だと思う?」と問いかけて、「働いている人の賃金を下げれば安くできるけれど、それで生きるのに苦労している人もいるから、労働に見合うお金をきちんと払うのがフェアトレードなんです」というような話をすると、興味を持って聞いてくれる人もいました。

鈴木 インターネット上にフェアトレードに関する動画もたくさんあるので、実際に見て実感してもらうのが有効だなと感じます。それと、ハンカチを作った時に感じたのが、自分の言葉で伝えることの大事さです。友達に今回作ったハンカチをアピールした時に、「作った本人に直接伝えられたからすごく響いた」と言ってもらったのは印象的でした。

平松 自分の言葉で伝えることの効果は私も実感しました。単にフェアトレードを説明するのではなくて、「このハンカチは薬剤を使っていないから、洗っても硬くなりにくいんです。だからこの価格なんです」と私自身が思うポイントを伝えると、納得してもらいやすかったです。

平松 野木さんたちがドリンクを作った時には、どのような工夫をしましたか?

野木 表参道ヒルズのカフェで売るのが最初だったので、その商業施設を訪れる20代、30代の女性層が主対象で学生はなかなか行かないお店だと思うのですが、そこは商品の見た目を工夫して、同世代層に向けたSNSでの発信をがんばりました。こういうお店もあるんだねという反応が結構あったのは、うれしかったです。

企業や団体との連携でよりアクティブなエシカルアクションへ

鈴木 入試説明会でハンカチを売ったときには「経営学部でこんな活動ができるんですね」という反応もあって、大学での学びを知ってもらう機会になったかもしれません。

野木 確かに。高校に行った時も、進学先としての興味から大学について聞かれることは結構ありました。企業とのコラボレーション活動ができるということに興味を持ってくれた子もいましたね。

鈴木 野木さんたちは来年度、どのような活動を予定していますか?

野木 今年度関わっていた企業様との連携は継続しつつ、他の団体や企業様からもオファーを頂いているので、その商品開発なども考え始めているところです。継続している企業様とのコラボレーションでは、販売個数やSNSのリーチ数といった具体的な数字も検証して、具体的に改善点を検討しています。こういった活動は、単発で終わらずに継続していくことで効果がありますし、継続していくためには振り返って改善していくことが重要だと考えています。

平松 私たちの活動もそうですが、実際に商品を作ることでアウトプットできるのは、すごくやりがいがありますよね。ビジネスプランの提案で終わる企業連携活動もあると思いますが、実際にものを作り、販売までできることは得難い経験だと感じています。

—今回の「TOKYOエシカル」     について、どんな印象を持ちましたか?

鈴木 ホームページでたくさんのパートナー企業・団体が載っているのを見て、こういう企業も活動をされているのかと知りました。フェアトレード関係で聞いたことのある会社も載っていたので、今後連携できる可能性があればと思います。

平松 エシカルについて広めたいと思っても、自分1人でできることは限られています。SBSLの活動ではそれなりに反応を得られてうれしかったのですが、東京都のような大きな規模での活動は、もっと多くの人に届くだろうと想像しています。その中で私たちの活動を紹介いただけるのはとてもうれしいですし、さらにがんばっていきたいと思います。

野木 パートナー企業の取組紹介の記事を読んで、勉強になるところがたくさんありました。私たちはマーケティング知識も全然足りないと思いますので、企業の活動から学べるところもたくさんあると感じています。今後イベントなどの場があれば、ぜひいろいろと話を聞きたいと思いました。

鈴木 別の活動場所であるSDGsプロジェクトで企業の方の話を聞く機会があったのですが、将来の仕事を考える上でも貴重な機会でした。SBSLで活動をしていると、自分の将来に向けた選択肢を広げることもできますし、今後も積極的に続けていきたいと思っています。

野木 私たちの活動を通じてフェアトレードへの興味が少しでも高まってくれたらいいなと思いますし、そういう広がりにつながる活動を継続的にしていけたらと思います。

 
稲積副学長からのメッセージ

 本学では社会に目を向け、実践的な学びをする「サービス・ラーニング」を大事にしてきました。特に近年は学外との接点を持ちながら学ぶ形態を増やしているところです。フェアトレード・ラボも経営学部学リーダーズも10年以上続く取組で、学生の自主的な活動を軸に発展してきました。フェアトレードやエシカルという領域は建学の精神とも大いに合致し、2021年には「フェアトレード大学」の認定も取得しています。また、大学の中長期計画ではSDGsとの関連を持って展開を図っているところです。そうした背景から今回の「TOKYOエシカル」に親和性を感じ、参加をいたしました。大学からの参加第1号だったとのことで、期待に沿える役割をしていけたらと思っています。
 その中でも、やはり大事にしたいのは、学生たちの力です。今回お聞きいただいたように、自主的な活動だからこそ、広がりも生まれると思っています。鋭く新鮮な感覚でエシカルやフェアトレードというテーマを捉えられる点は、コラボレーションする上での魅力になることでしょう。「TOKYOエシカル」の中で、こうした若い感性が多方面とつながっていくことを願っています。

左から:副学長 稲積宏誠様/鈴木風夏様/平松愛生様/野木愛美様

*1 参考:https://www.unic.or.jp/activities/international_observances/un70/un_chronicle/ogata/

*2『2030年の世界地図帳―あたらしい経済とSDGs、未来への展望』落合陽一著 SBクリエイティブ

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