パートナー企業・団体の取組紹介【ロスゼロ】

「もったいないもの」と「ほしい人」の出逢いのプラットフォーム
~「ロスが減る、笑顔が増える」選択肢を増やしてみませんか?~
【ロスゼロ】
 

株式会社ロスゼロ
代表取締役
文 美月様

今回は「TOKYOエシカル」パートナーの株式会社ロスゼロに、エシカル消費に関する取組などを伺いました。製造や流通の過程でどうしても生じてしまう食品ロス。「もったいない」を何とかできないだろうかと立ち上げた取組について、お話いただきました。新たな選択肢を知り、エシカルな行動の幅を広げてみませんか?

「ロスゼロ」のはじまり

―どのような経緯でロスゼロは始まったのですか

1つ前の段階として、私自身出産後の再就職が難しく自分で起業するしかないと思い、2001年にヘアアクセサリーのeコマースを始めました。事業が軌道にのった2010年頃から、日本で使われなくなったヘアアクセサリーを回収して途上国への寄贈・販売・職業支援に活用する取組を始めました。「もったいないものを、次の笑顔につなぐ」という発想が生まれ、現在では、カンボジアのほか世界10カ国ほどに広がっています。
継続していく仕組みを大事にしたいと思い、ヘアアクセサリーの回収の際、お客様に送料負担してもらう代わりにクーポンを発行する形にしました。それによって無理なく10年以上続けることができています。

―そこから、なぜ食品事業へ広がったのでしょう?

「もったいないもの」と「喜んでくれる人」のマッチングを、もっと大きな「もったいない」に役立てられないだろうかと考え始めました。2017年後半、SDGsという言葉はまだ一般的ではなかったと思いますが、いろいろと見聞きする中で、今後食品問題がますます大きくなる社会課題と確信したのです。
また、私生活での体験も関係しています。2人の子どもを育てながら仕事をしてきたので、家事の時間もあまりとれず、冷蔵庫にあることを忘れて新たに購入したり、忙しくて使い切れないものが出てしまったりという経験もありました。一方で、使い切れなかった食品を持ち寄って料理するような場もたまに作っていました。楽しくみんなで食べきることができればという気持ちは、今の事業にも通じていると思います。

―畑違いの分野で、事業の拡大初期は大変だったのではないでしょうか

2018年にヘアアクセサリーの海外向け活動に関するクラウドファンディングをやったのですが、それが1つの後押しになりました。カンボジアへのトイレや文房具の支援を呼び掛けて、リターンとして規格外の高級スイーツをお届けするという内容です。たまたまそのメーカーの経営者と知り合いで、規格外品がロスになりがちだというのを聞いていたのがヒントになりました。

―途上国支援と食品ロス問題に同時に向き合われたのですね

規格外品を寄付することもあるそうですが、やはりブランド品なので、一般市場に簡単に出せるものではありません。でも丁寧にその意味を伝えれば協力いただけるというのを実感しましたし、その会社の方々も活用できたことをとても喜んでくれました。
このスイーツの会社のように、メーカーのブランドを損なうことなく、社会的に意義がある形で活用する事業ができないかと構想し、2018年4月にロスゼロのECサイトを立ち上げました。

作り手の想いを共感してくれる人に届ける「ロスゼロ」のエシカルなプラットフォーム

―現在の事業の概要をご紹介いただけますか?

まず企業からの商品を消費者に届ける形として、ECサイトの運営と、サブスクリプションサービス(サブスク)を行っています。
ECサイトでは、例えば、蓋の傷で販売が困難となった世界トップクラスのオリーブオイルなどを販売しています(※)が、その商品のストーリーや思いを丁寧に伝え、遜色ない商品であることをお客様に理解して選択いただける工夫をしています。ブランド毀損を避け、価値をあげることにもつながります(※完売の可能性があります)。
また、3分の1ルールの影響で販路を失った食品も販売しています。

サブスク「ロスゼロ不定期便」では、2か月に1回、いろいろなお菓子や食品を詰め合わせてお客様に届けています。いつ何をお届けするかをロスゼロに任せていただいています。3分の1ルールに影響を受けたものに加え、企業名は出さずに流通させたいという商品や、量が極端に多いあるいは少ない商品などを組み合わせています。食ロスにつながる商品をネガティブにではなく、幸せな気持ちも一緒にお届けしたいという思いで、「いつ何が届くか?ワクワク福袋」と呼んでいます。サブスクによるロスの削減量は2022年11月現在で、ひと月5~6トンほどにもなります。
この取組もあり「日本サブスクリプションビジネス大賞2022」で特別賞をいただきました。

画像:©株式会社ロスゼロ

また、未利用原料を使って商品開発・販売をするアップサイクル事業も行っています。例えば、チョコレート製品の原料となる製菓材料は、そのまま消費者に販売できるものでもなく、そこにも廃棄が生じてしまっています。そういったものをアップグレードするのが「アップサイクル」となりますが、私たちもこうした中間材料を使ってオリジナル商品を開発し、ECサイト上から購入できるDtoCのほか、百貨店でのポップアップでも販売しています。使われないままとなった原材料に新たな命を吹き込み、生まれ変わらせるという「食べる理由がある」という意味をこめて「Re:You」という取組です。

画像:©株式会社ロスゼロ

―どのようなことを大切にエシカルな事業活動をされていますか

一生懸命作ったものを大事にしたいというのは、誰もが思っていると思います。SDGsという言葉も広がり、時代も変わってきました。共感してくれる人に届くよう、作り手の思いをきちんと伝え、それを理解して選択してもらうことを大切にしています。また、私たちはメーカーと消費者のの橋渡しとして、お互いがwin-winになる仕組みを目指しています。ですので、安さではなく共感によって続く形が望ましいなと。もちろん、おいしさやお得さというのも大事だというのは分かりますので、満足してもらえる質量にもこだわっています。

―お客様はどういう形で活用されているのでしょうか

家族で食べるためにという方もいれば、職場に持っていく方もいるようです。その商品にまつわるストーリーが分かるようなご案内を同梱しています。Re:Youシリーズでは、QRコードも案内しています。共感から購入いただく方が多いためか、継続率は高いですね。
また、コロナ禍でステイホームが続いた時に、エシカル消費と重なる行動が自然と増えたと思っています。苦境に陥っている生産者、飲食店などの発信を見て、廃棄される前に何とかしよう、どうせ買うなら支援できる形で買ったという人も多いのではないでしょうか。これもエシカル消費の広がりの一端だと感じています。

―拠点は関西と伺っていますが、東京ではどのような活動をされていらっしゃいますか

食品ロスの問題は全国共通です。特に東京は最大の消費地ですので、新しい消費のあり方を提案していく場として大きな可能性を感じています。省庁や食品メーカーの本社も多くあり訪問してロスゼロの事業を紹介したり、東京の百貨店でのイベントに出展する機会も増えてきています。
さらに、活動の幅を広げるという面では、未来の消費を担っていくZ世代にも、ロスゼロの活動やエシカル消費を伝えていきたいと、食品ロスを起点とした大学との連携も進めています。大学から授業や講演などを依頼いただいたり、学生のインターンも受け入れています。商品作りを大学生と一緒に行い、そこに企業も加わってもらうような取組も行っています。大学生の熱意はすごいなと実感します。
食品ロスに関する行動が文化として根付いていけば、きっと社会も変わっていくでしょう。

画像:©株式会社ロスゼロ

「TOKYOエシカル」とともにエシカル消費の広がりを目指して

―「TOKYOエシカル」のどのような点に関心を持たれましたか?

消費者が変わると、社会も変わっていくと思っています。このプロジェクトを通じて、ほかのパートナー企業・団体の皆さんと一緒に、消費者の方々の選択肢を広げていけたらと思います。特に、東京からの発信は全国に向けた波及効果も大きいと感じています。
企業側もロスを出したくて出しているわけではないのですが、様々な事情があります。それはなかなか消費者側からは見えませんし、企業同士でも分からないこと、企業同士だから分かることもあると思っています。こうした企業側の事情を汲み取れるのが私たちの特徴かもしれません。そこを丁寧につなぐ役割を、私たちがこれまでエシカルな事業を進める中で、苦労したり経験してきたこと、お客様と話をしてきたことなどを、役立てながら「TOKYOエシカル」での活動を行っていきたいと思っています。

―「TOKYOエシカル」と一緒に目指すエシカルな日常とはどのようなところでしょうか

企業同士の商品を組み合わせたアップサイクル商品づくりということもあり得るかもしれません。得意なところをそれぞれが担い、全体としてソーシャルインパクトが高まるようになっていけばと感じています。

―最後にTOKYOエシカルは企業・団体だけでなく消費者のお一人ひとりと、皆で一緒に進めていくプロジェクトです。この記事の読者の方にメッセージをお願いします

実は食品ロスの45%ほどを占めるのが、家庭からの廃棄です。ですので、適正な量を買う、飲食店でも頼みすぎない、残さないということは、みんなで意識していけたらと思います。そのうえで、せっかくなら人や社会、環境に優しいエシカルな方を選択することも考えてみてはどうでしょうか。消費者である皆さんの動きが変われば、事業者も変わります。そしてそれが、社会を変える力になると思っています。

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